昨今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれています。同時に「我が国、日本は、諸外国に比べてDX化の推進が遅れている」というのもお決まりのオチになっています。

過去には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染防止のために自宅でリモートワークをしていたのに、「ハンコをもらうために出社する」という冗談のような話もありました。DX化の話が出るたびに大手ITテック有する米国や、電子国家のエストニアの事例が引き合いに出され、「日本はIT技術者を増やせ」という声も見られます。

しかし、DX化の促進には世界を変えるようなイノベーティブなIT技術者より、まずは現場レベルで「できるところからITを使ってみる」という、小さな一歩への意識改革が必要ではないでしょうか。というのも、IT化推進を阻むケースの中には技術力ではなく、現場の思考停止の部分も少なくないと感じるからです。

なぜ研修をオンラインで実施しない?

先日、ある行政機関が主催した研修に参加しました。

自主的なお勉強として参加したわけではなく、会社で取得した資格の効力を保持するために、参加が必須となっていたものです。内容はこの手の研修によく見られる、法改定したものの案内や、事故発生回避を促す再現VTRなどが中心です。高齢の講師が手元のメモを一言一句読み上げ、VTR動画を再生して参加者はそれを視聴して終わり、というスタイルです。

研修所ではしっかりとした感染拡大の防止対策をしていました。例年に比べて時短、同時に参加できる人数の制限や、会議室内での参加者同士の距離をキープするのは当然として、消毒、換気などにも取り組んでいました。

しかし、これだけ感染拡大防止対策を講じるくらいなら、なぜオンラインでしないのか不思議です。この研修の本質は「研修内容の情報を資格保持者に届ける」という情報伝達にありますから、研修内容を動画にまとめてリモート視聴してもらえばよいだけのことではないでしょうか。

この研修は無味乾燥な情報伝達としてのものであり、ビジネスセミナーやビジネスプレゼンテーションと違って、ほとばしる情熱や現場のアツい空気感などのライブ感も必要なく、参加者とのインタラクティブなコミュニケーションもありません。特別に卓越したITスキルがなくても、ZOOMやYouTubeを使えば、簡単なマウス操作で実現できるはずです。

視聴者が動画を飛ばし見したかは、参加後に簡単な理解度チェックテストや、アンケートを取れば確認することができます。

「今までこのスタイルでやっていたから」という思考停止状態では、どれだけ優れたテクノロジーが世にあっても使われなければ意味がないのです。