しかし、その後は少子化による受験者数の減少が顕著となり、私立大学の重要な収入源の1つである“入試受験料”が大きく減っています。そのため、“本当は授業料をもっと値上げしたいけど、あまり値上げできない”という私立大学の苦悩を見て取ることができます。

国立大学の授業料据え置きが、私立大学の経営を圧迫している一因となっており、私立大学は国立大学の授業料値上げを待ち望んでいると見るのは、筆者の思い過ごしなのでしょうか?

“そこまでして大学に行く必要があるのか?”を真剣に議論する時期に

実際、財務省と文科省の判断一つで、国立大学の授業料が再び値上げになる可能性は十分あるでしょう。しかし、その時に、私立大学が大幅な授業料値上げに踏み切れば、最終的には家計への負担増に結びつくのは明白です。多くの家計で実質的な収入が減り続ける中、負担増に耐え切れない可能性も高いと思われます。

仮に経済的負担増で大学進学者の減少が顕著となれば、私立大学を中心に経営困難に陥る大学が出てくるでしょう。私立大学にとっては、授業料を上げるのも地獄、下げる(上げられない)も地獄なのかもしれません。

一方で、家計に大きな経済負担をかけてまで大学に行く必要があるのか?という議論があることも事実です。

これは各家計での問題になりますが、本来ならば、大学受験の前に将来的な、少なくとも、向こう4年間の収支状況をシミュレーションが必要です。そういう“事前準備”なしに大学へ進学すると、授業料支払いが困難になるという状況に陥ることになりかねません。

そうは言っても、もう今年の受験シーズンは最後のヤマ場。合格の知らせが届いて喜びに沸いた後、受験生は今一度、こうした現実に向き合ってほしいと思います。

葛西 裕一