公務員だから老後は安泰?
こう見てみると、やはり冒頭の予想どおり公務員であれば退職金もしっかりと貰え、老後も安泰な生活が待っているかのように思えます。しかしながら、本当にそうでしょうか。内閣人事局「退職手当の支給状況」を平成27年度と令和元年度で見比べてみましょう。国家公務員の常勤職員の平均定年退職金額は、「21,813千円」から「20,906千円」へとここ数年だけ見てみても減少傾向にあることが分かります。
この背景のひとつに、民間企業の退職金が減少傾向にあるということがあげられます。公務員だからといっていつの時代も安泰というわけではなく、そのときの世間の情勢に鑑み、退職金水準の見直しが図られているのです。つまり言い換えると10年後、20年後、会社員であっても公務員であってもその退職金が今と同水準であるかどうかの保障はないということなのです。
また、その象徴ともいえるかのように2017年1月にiDeCoの加入対象に公務員も加わることとなりました。公務員であってもその退職金を当てにするのではなく、会社員同様に自らの年金を自分で貯める制度を活用し、老後に備えて動き始める必要が出てきたということではないでしょうか。
参考資料
- 総務省「地方公務員数の状況」
- 総務省統計局「労働力調査(基本集計)」
- 総務省「地方公務員の退職手当制度について」
- 人事院「退職手当の調整額について」
- 総務省「地方公務員給与の実態」第9表の1「団体区分別、職員区分別、退職事由別、年齢別退職者数及び退職手当額」
- 総務省「地方公務員給与の実態」第9表の2「団体区分別、職員区分別、退職事由別、年齢別退職者数及び退職手当額(定年退職―再掲)」
- 日本経済団体連合会「2018年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」
- 東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」モデル退職金
- 内閣人事局「退職手当の支給状況」
多田 秋