老舗デパートの努力は?

また上述の記事では、デパートの「商品の差別化」や「eコマース戦略への投資が少ない」ことも指摘しています。

特に、デパートのオンラインショップのポリシーには配慮が足りないことは筆者も実感しています。例えば、送料無料にする設定金額。購入価格計50ドル以上と設定されるよりも、アマゾンのようにプライム会員でなくても25ドル程度から送料無料にするほうが消費者としては買い物しやすいのです。

先日もあるデパートのクーポンを利用して買い物をしようと思ったのですが、クーポンをつかっても送料がかかることが分りました。結局、商品自体はちょっと高いけれど25ドル以上で送料無料になるアマゾンのほうが全体的に安くなるのでアマゾンで購入しました。

返品についても、アマゾンは多くの場合近所の宅急便のカウンターに持っていけば返品送料は無料。とても便利なシステムになっています。デパートや小売店のオンラインショップでは、返品の送料は顧客負担というところも少なくありません。

アマゾンは従業員に対する扱いが問題視されています。しかし、多くの人が結局はアマゾンの便利なシステムを選んでしまうのも仕方ないと思わざるを得ません。

新時代のデパート“Neighborhood Goods”

デパートが生き残るためには、斬新なアイデアが求められています。例えば、最近注目されている“Neighborhood Goods”(ネイバーフッド・グッズ)というデパート(※2)は、SNSなどで話題になっている有名企業の商品、独自の選択基準で選んだ無名スタートアップや小さなローカルビジネスのD2Cブランド商品を集めた新しいタイプのデパートです。2018年にテキサスを拠点にオンライン販売と実店舗販売を始め、じわじわ実店舗を増やし人気を集めています。

ブランド自体や商品の背景について共感を与えたり、ライフスタイルのアイデアや体験を提供することでその商品に愛着を感じさせ購入してもらうという独特の販売スタイルをとっています。人々が集まり、買い物をしたり食事をしたりイベントに参加するなど、コミュニティー広場としての役割も担おうとしています。しかし、客層が限られるのではないか、今後どこまで成長するのかは個人的に興味深いところです。

かつて、庶民で賑わった老舗デパートが没落してしまうのはとても残念です。しかしディスカウントショップなどで掘り出し物を見つけるようなワクワク感もなく、そこでしか見られないという特別な商品があるわけでもない、オンラインショップには便利さへの配慮もない、そんな今のデパートから庶民が遠のいていくのは納得せざるを得ません。今後、デパートに起死回生があるか、このまま没落していくのか、注目していきたいと思います。

参考資料

美紀 ブライト