『セッション』(2014)

狂気じみているほどに音楽に熱中するドラマーを主人公に描いた、ただひたすらにドラムを叩き続ける作品です。映画『ラ・ラ・ランド』を手掛けたデイミアン・チャゼル監督作品で、チャゼル監督の『ラ・ラ・ランド』しか知らない人にこそまったく違う一面を持つこの作品がおすすめです。

しかも本作は、監督自身が学生時代に経験した実話にもとづいて製作された映画で、一つの技を極めることの厳しさ、残酷さ、そして周囲からは恐ろしく感じてしまうほどの熱意を持つことの重要さなど、なにかの分岐点に立たされている人の手助けにもなるかもしれません。

とはいえ、映画を観始めたらこの世界観に浸ってしまい、ただただのめり込んで見入ってしまう時間を過ごす人がほとんどではないでしょうか。

『シング・ストリート 未来へのうた』(2016)

父親の失業や、家庭崩壊寸前の両親、荒れた公立学校への転校など、人生わずか14年ながらどん底を迎えていたコナーが、街なかで見かけた大人びたラフィナに心を奪われ、自分のバンドのPVに出演させることを思いつくところから始まる物語です。

ラフィナは映画『ボヘミアン・ラプソディ』にも出演していたルーシー・ボイントンが演じており、濃いメイクにインパクトのある容姿と本作でも目が離せない存在です。

今回紹介した10作品のなかでは、青春を謳歌した登場人物たちがもっとも多く、恋に友情に家族、学校とベタな展開やテーマが続いているにも関わらず、最後にはじんわりと涙をさそうようなシーンがあり、未来を感じさせるストーリーに希望が湧いてきます。

『小さな恋のうた』(2019)

MONGOL800の楽曲「小さな恋のうた」をもとに製作された作品で、佐野勇斗さん主演、山田杏奈さん、森永悠希さんらが出演しました。

出演者らがリアルに演奏するバンドシーンのフレッシュな雰囲気がそのまま映像として映画のなかで表現されていることと、沖縄という歴史ある独特の風土のなかで過ごす高校生たちの社会問題にも密接したリアルな生活が見どころです。

洋画や洋楽には手を出しづらいと感じている人も、日本で過ごす多くの人が耳にしたことのあるこの楽曲を通して描かれる物語や音楽に自然と身体が乗ってしまうはずです。公開当初から、邦画のなかでも決して規模の大きい作品ではなかったのですが、観た人の心に確実に残る良作です。

まとめにかえて

今回の緊急事態宣言発令だけでなく、昨年から長く続く自粛の影響で、心も身体もイマイチリフレッシュしきれないまま時間だけが過ぎていくという日々を過ごしている人も多いと思います。観ても楽しい、聴いても楽しい映画を観て、いっときでもシビアな現実から離れられる時間が作れると良いですね。

藤枝 あおい