一般に、来客数が大幅減少になると客単価は上昇する傾向が見られます。なぜならば、外食産業では可処分所得の低い消費者から減少し始めるからです。その結果、高価格帯のメニューをチョイスする消費者が相対的に多くなり、平均客単価は上昇するという仕組みになっているのです。

しかしながら、これは焼肉店にも当てはまるはずですが、なぜ焼肉店の客単価が低下したのでしょうか?

一人焼肉の需要増加でメニューや価格に変化

最大の理由は、いわゆる一人焼肉の増加です。ご存知の人も多いと思われますが、従前の焼肉店のビジネスモデルは、複数人数で来店することが大前提となっていました。ロースやカルビなども概ね2人前が“1つの定量”という価格設定になっていたことは周知の事実と言えます。

しかしながら、生活様式の変化に伴い“おひとりさま”の来店が増えたことで、メニューの見直し(商品ラインナップや価格)が必要不可欠となり、その結果として客単価が低下したと考えられます。

もちろん、現在でもまだ複数人数での来店客の方が多いと思われますが、おひとりさま来店客を無視できなくなったことは確かでしょう。いや、既に焼肉店は一人焼肉なしでは生き残れない時代に入ったと言っても過言ではないはずです。

おひとりさま増加は将来の経営にダメージ?

ただ、残念ながら、今後も客単価の低下が続くとなれば、店の経営に対してボディブローのように徐々にダメージを与えると予想されます。特に、現在は円高傾向のお蔭で輸入牛肉が比較的安価で調達できますが、この状況が崩れると大幅な収益悪化も想定できるでしょう。

したがって、多くの焼肉店は、コロナ禍における相対的な健闘が続いている間に、従前のビジネスモデルを脱却して、一人焼肉でも十分な収益を上げられるような構造改革が求められます。

こうした状況を勘案すれば、焼肉店を相対的な勝ち組と評価するのは時期尚早かもしれません。

葛西 裕一