話を新車ディーラーに限定します。日本国内における年間の新車販売台数は約490万台ですから、単純計算では1店舗当たりの年間販売台数は約300台となります。実際には、店舗の規模や取り扱い車種の違い(軽自動車や高級車)があるため、店舗当たりの販売台数には大きな差異があるはずですが、年間300台はあくまでも単純平均としましょう。
年間300台販売して得られる粗利は1億円未満と推測されます。ここから人件費や店舗維持費(利払いや固定資産税含む)や販促費を差し引くと、最終的な利益はほとんど残らないと考えられます。それどころか、赤字に陥る店舗が続出しても不思議ではありません。売上高(販売台数)が少しでも落ち込めば、厳しい収益になる危うい構造と言えます。
新車ディーラーの収益を支えるアフターサービス部門
しかし、新車ディーラーにはアフターサービス(整備、修理、メンテナンス)という高収益事業があります。クルマを所有されている方なら、物損事故の時は言うに及ばず、法定車検を始めとした点検や部品交換で年に1度はディーラーに行く機会があると思われます。そして、何だか妙に高い金額を支払う…という経験があるのではないでしょうか。
また、クルマを運転する際に事実上、必要不可欠となっている任意自動車保険も、その多くはディーラー経由で申し込まれており、販売店の収益に多大な貢献を果たしています。
電化製品に代表される一般耐久消費財は、モデルライフが短いため、定期的なメンテナンスを行う慣習はありませんし、故障時の修理も多くて1~2回でしょう。高級耐久消費財のクルマとの大きな違いです。
新車ディーラーにも押し寄せる変革の波
新車の販売形態が昔のままでも、ディーラー業界がずっと成り立っているのには大きな理由があることがわかります。しかし、こうした安泰に見える新車ディーラーにも、自動車保険のネット販売拡大、自動車用品店の事業拡大などの脅威は着実に増えてきています。
また、新車販売市場が落ち込み続ければ、点検や修理の対象となる保有台数も減少していくでしょう。新車ディーラーにも大きな変革の波が迫っているとも言えるのではないでしょうか。
LIMO編集部