イスラエル、サウジは“対イラン同盟”へ?
しかし、最も懸念されるのはイスラエルとサウジアラビアの動向だ。両国はイランと長年対立しているが、最近はトランプ政権の仲裁役もあり、経済を中心に両国は関係をこれまでになく緊密化させている。
また、イスラエルとUAEやバーレーンなどのアラブ諸国は国交正常化を発表し、サウジアラビアなどはイランとの接近を理由に外交関係を断絶していたカタールとの国交回復を実現した。
今後はカタールとイランの関係の行方にも左右されるが、こういったイスラエルやサウジアラビアの動きは対イラン包囲網をより強固なものにするのが狙いだろう。
トランプ政権と蜜月関係だった両国だが、国際協調や人権遵守を重視するバイデン政権でその蜜月が維持できるわけではない。イスラエルやサウジアラビアはそういったことも事前に察知し、米国の関与が薄くなる形でも“対イラン同盟”のようなものを構築したい狙いがある。
イランは最近、核兵器製造に使用される恐れのある金属ウランの製造に着手し始めたとみられる。イランはバイデン政権が初めにどう出てくるかを試すために、あえて強硬な姿勢を見せているとの見方もあるが、イスラエルとサウジアラビアの動向を注視すれば事態は悪い方向に流れている。
中東に展開する日系企業は、今後のイラン情勢の行方をより注視していく必要があろう。
和田 大樹