さらに、日本の既存住宅のうち、持ち家は6割です(総務省統計局「平成30年住宅及び世帯に関する基本集計」による)。持ち家の空き家率は前回調査で約9.4%となっており、5年ごとの調査で毎回1%ずつ空き家率が上昇しています(図表2参照)。
以上のデータ、そして日本のさらなる高齢化を考えてみれば、持ち家の空室率はますます悪化していくことが予測されます。
全国の自治体が空き家の対処に頭を悩ませている
また、空室率の悪化に伴い、全国の自治体は放置される空き家の対処に頭を悩ませているという実態もあります。
たとえば、古家を放置させて老朽化が進めば、草木が生い茂って虫がわいたり、ゴミが溜まって悪臭を放ったりするなど、近隣住民に迷惑をかけることになってしまいます。
さらに、相続を受けた家がしっかりと相続人に移転登記されていない場合、自治体は誰に固定資産税を請求すれば良いのかわからないという問題も起きてしまうのです。
そのため、国は2015年に「空き家対策特別措置法」という法律を施行させました。空き家対策特別措置法は、空き家の放置によって発生するさまざまなトラブルを解消し、空き家の活用や処分を後押しするための法律です。
この法律によって、相続した空き家をそのまま放置してしまうと、なんと平時の6倍の固定資産税が請求されることとなりました。
では、なぜ相続した空き家をそのまま放置してしまうと、平時の6倍の固定資産税が請求されるのでしょうか? その理由を知るためには、空き家対策特別措置法が施行されるに至った経緯を知る必要があります。
空き家対策特別措置法が施行されるに至った経緯
まず、住宅が建っている土地というのは「住宅用地」という区分となり、固定資産税が6分の1に軽減されるという特例があります。
そのため、相続した実家を「古いから」という理由だけで解体してしまうと「住宅用地」ではなくなってしまい、翌年の固定資産税が6倍になってしまうのです。
こうした理由から、固定資産税を抑えるために空き家を放置する人が続出し、誰も住んでいない空き家が増えてしまったのです。そこで国は「空き家をそのまま放置したら更地と同じ扱いにするぞ!!」として、空き家対策特別措置法という法律を施行させたというわけですね。
こうした経緯から、相続した空き家をそのまま放置してしまうと平時の6倍の固定資産税が請求されるということになったのです。
国はこの法律を施行することによって、空き家の放置によって発生する様々なトラブルを解消しつつ、「空き家を放置しないでください」「空き家をしっかり活用してください」というメッセージを国民に伝えているということになります。