消費不振で際立つGMSの退潮

GMS(総合スーパー)の退潮が続いています。

イオン(8267)はダイエーとイオンリテールの改革に取り組んでいますが、2016年3-5月期の営業赤字は対前年同期比で拡大しています。イトーヨーカ堂は不採算店舗の閉鎖、テナント導入による売り場活性化、コスト削減を進めていますが、収益の低迷が続き、店舗に係る減損を計上することになりました。ユニー・ファミリーマートホールディングス(8028)傘下のユニーも、統合を機に積極的な店舗閉鎖を進めています。

GMSは、食料品・衣料・日用品をワンストップで提供し、まんべんなく儲けるという事業モデルです。しかし、特に衣料と日用品は業態を超えた競争が厳しく、長年GMS事業の収益性を圧迫してきました。

そこに最近の消費マインドの冷え込み、天候不順、秋物の立ち上がりの鈍さが重なり、改革待ったなしとなっています。

躍進続けるドンキホーテホールディングス

GMSの撤退が進む中、居抜き物件への出店で存在感を高めると期待されているのがドンキホーテホールディングス(7532)です。2016年8月期は27期連続の増収増益を達成しました。この年度には40店出店していますが、期末の店舗数が国内327店舗、全社341店舗ですので、その出店ペースの速さが際立ちます。

ドン・キホーテというと、都心型24時間営業の店舗で若者がジャングルのような圧縮陳列を楽しむ店舗という印象の強い方も多いでしょう。しかし、いまではこうした都心店舗は慌ただしい旅程をこなすインバウンド需要の受け皿として支持されています。

また、2007年の長崎屋買収とその後の立て直しを通じて、ファミリー層向け、郊外立地の業態開発を進めてきました。その結果、さまざまな居抜き物件で出店できるようになってきたことが当社の成長を牽引しています。

GMSは次々ドン・キホーテに置き換わる!?

こうしたトレンドを見ると、GMSの退潮はドンキホーテホールディングスには強い追い風であるようです。

しかし、GMSの構造改革は店舗閉鎖だけではありません。生鮮を含めた食料品事業は立地、企業ブランド、購買力がものをいう市場ですので、GMSの商材の中では経営努力が成果につながりやすい分野です。したがって、食料品事業に特化しながら残りの売り場は有力テナントにまかせるか、建屋を新築し低層を食品スーパーとして再出店するという方法もあります。都市部周辺であれば、モールのニーズも高いでしょう。

今週は、セブン&アイ・ホールディングス(3382)の新事業戦略が発表されますので、現存するイトーヨーカ堂がどう仕分けされ業態を改善させていくのか、その内容が注目されます。

一方、ドンキホーテホールディングスは2016年6月に東京大森の老舗百貨店「ダイシン百貨店」をMEGAドン・キホーテとしてリニューアルするなど、GMSの居抜きにこだわっているわけではありません。生鮮の取扱についても一定の距離を置いているようにも見受けられますので、今のGMSの機能をまるまる受け継ぐとは言えません。独自路線を貫いていくと思われます。

 

LIMO編集部