国語の入試で合格するための「技術」とは
2019年、神奈川県の私立・栄光学園中学校で出題された物語文読解の問2(人物の変化を問う設問)について、答案例だけを列挙してみます。この中に、「ふくしま式」の正解例が1つだけあるのですが、それがどれなのか、当ててみてください。
1)一人で強がることで孤独感に耐え、友達のいない自分が苦しかった時に歌会に出会い、それが全てではないと気づき強くなれた。
2)友達のいない自分が苦しく、一人でいると周りの目が気になっていたが、魔法によって、教室だけが全てじゃないと思えるようになり、救われた。
3)学校から与えられた狭い交友関係ではなく、自分から広げる交友関係を歌会という場で得られたことで、いつも堂々としていられる強さを持てるようになった。
4)短歌のもたらした次の魔法である歌会に出会えたことにより、自分の世界は教室だけではないことに気づくことができ、自分の居場所を手に入れられたことにより、自分に自信を持ち堂々とできるようになった。
さあ、どうでしょう。本文・設問がなくても、きっと当てられます。一読して、「あ、分かりやすい」と思ったものが、答えです。
――そう、3番ですね。
- 学校という「他者」から強制された「狭い」交友関係
- 「自分」で手に入れた「広い」交友関係
ここには、明確な「対比関係」があります。他の答案例は、対比関係がないか、あってもぼんやりしています。3番の答案には「他者」とは書いていませんが、「学校から」「自分から」という言葉が「ではなく」という対比の文中接続語によってつなげられていることにより、それが「他者」の意味であることが読み手に明確に伝わります。
読み手とは、採点者です。対比関係を見つけたとき、採点者は「あ、この受験生は分かってるな」と思うのです。「分かっている」とは、すなわち「分けられている」ということ。それは、対比の骨組みが整っているということです。これが実は、合格最低点にたどり着くために最も大切な原理原則です。
字数指定のない箱型の解答欄に、とにかく文字を詰め込んで長く書けばいい――そう思っている受験生は多いようです。特に、難関校受験生に多い。とりあえず手はすらすら動くのです。しかし、中身が伴わない。長く書いてから削るのではない。短く書いてから肉づけせよ。
大切なのは短い骨組み。特に、対比的な骨組み。このことさえ意識すれば、合格最低点も近づいてくることでしょう。
〈書籍情報〉
『ふくしま式で最難関突破! 男女御三家・難関校 中学入試国語を読み解く』
著者:福嶋 隆史
発行者:張 士洛
発行所:日本能率協会マネジメントセンター
〈著者プロフィール〉
福嶋 隆史(ふくしま・たかし)
(株)横浜国語研究所・代表取締役
1972年、横浜市生まれ。早稲田大学第二文学部を経て、創価大学教育学部(通信教育部)児童教育学科卒業。日本リメディアル教育学会会員。日本言語技術教育学会会員。日本テスト学会会員。公立小学校教師を経て、2006年、ふくしま国語塾※を創設(※JR横須賀線 東戸塚駅・徒歩2分)。
著書として、『「本当の国語力」が驚くほど伸びる本』『ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集〔小学生版〕』『ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集〔小学生版ベーシック〕』『ふくしま式「本当の語彙力」が身につく問題集〔小学生版〕』『国語読解[完全攻略]22の鉄則(高校受験[必携]ハンドブック)』(以上、大和出版)、『論理的思考力を鍛える超シンプルトレーニング』(明治図書)などがある。
日本能率協会マネジメントセンター