ミニマリストは良いことだらけ、と信じて疑わなかったHさん、徐々に友人にもこの素晴らしさを味わってもらいたい、と思うように。

「そこで、頼まれてもいないのに、友人宅に押しかけては『断捨離アドバイス』を行っていたんです」

たとえば器が好きな友人のところにおじゃましたら「ひとり暮らしなのに何枚もお皿なんていらないよね? 捨ててしまったほうがいいよ」

本好きの友人には「本なんて図書館で借りればいいんだよ。この天井までの本棚一杯の本がすごく圧迫感を与えているのに気づかないの?」といった具合。

最初のうちは「そうね、ちょっと増えすぎたかもね」なんて調子を合わせてくれていた友人。それをいいことにHさんは勝手に「これとこれは捨てな」「これは要らないでしょ」と友人の私物を断捨離し始めたそう。

「とうとう『あなたの価値観を押し付けないでほしい。私はミニマリストになりたいわけじゃない』と友人に苦言を呈されてしまいました。それ以来、なんだか気まずくて彼女たちとは会っていません。私が“断捨離”されてしまったんです

まとめ

本当に必要な物だけに囲まれてシンプルに暮らすミニマリスト。どちらかといえば物が多すぎるのが現代人、多くの人が憧れを感じる気持ちはよくわかります。かくいう「物を捨てられない」筆者も、ミニマリストには羨望のまなざしを向けているひとり。

とはいえ、物が多かろうと少なかろうと、大切なのは「心地よさ」。憧れの気持ちにしばられて、生きづらくなってしまっては元も子もありません。

大中 千景