ノーベル物理学賞・化学賞に強い日本
ノーベル賞の季節がやってきました。生理学・医学賞、物理学賞、化学賞が、10月3日(月)から順次発表される予定です。自然科学系のノーベル賞受賞が相次ぐ日本ですが、2000年以降では米国に次いで2番目の受賞数だそうです。
1949年の湯川秀樹博士の最初の受賞からこれまで、現在は外国籍の受賞者を含めると24人がノーベル賞を受賞しています。うち物理学賞、化学賞だけで18人が受賞しており、今年の発表でもこの2分野での受賞の可能性が取り沙汰されています。
発表が近づくにしたがって日本人の有力候補についての事前予測が飛び交い、既に関連する企業の株価に動きが出るなどしています。いったいどの分野が受賞し、その関連銘柄は何か。当たるも八卦ですが、思い切って予想してみます。
化学賞ではリチウムイオン電池に可能性が
物理学賞が素粒子物理学など基礎理論に重点が置かれているのに対して、化学賞はどちらかというと産業化されたものが受賞するケースが多いと言われます。そうした観点から、以前より候補として挙げられてきたリチウムイオン電池が今度こそ・・・というのが筆者の希望的観測を交えた予想です。
今やスマホなど民生用電子機器に不可欠のリチウムイオン電池は、電気自動車(EV)の普及などを考えても受賞の下地は十分と思われます。実際、リチウムイオン電池の原型を試作した旭化成の吉野彰顧問は、これまで何度も候補者として噂されてきました。
同顧問との関係では、東芝リサーチ・コンサルティングの水島公一氏が米国テキサス大学のJ・グッドイナフ教授と正極材料の開発を行い、元ソニーの西美緒氏らが世界で初めて実用化した実績も併せて評価されるかもしれません。
物理学賞、今年は「重力波」の初観測が有力だが
物理学賞では、米国の研究グループによる重力波の初観測が有力視されています。同研究グループは、2015年9月に2つのブラックホール合体に伴って発生したと見られる「重力波」を初めて観測したことを今年2月に発表しました。これは、アインシュタインによって予言されていた重力波の理論を実証した大きな研究成果とされています。
日本人では、カーボンナノチューブ(以下、CNT)の研究者である名古屋大学特別招聘教授の飯島澄男氏にも可能性があります。このCNT関連では、日本ゼオン(4205)、NEC(6701)、古河電工(5801)、昭和電工(4004)などが主要な関連企業群です。
中でも、日本ゼオンはNEDOプロジェクトの成果をもとに、2015年11月から世界で初めてCNTの量産化に入っています。ちなみに、前述の飯島教授はNEC特別主任研究員の肩書も持っています。
生理学・医学賞で山中伸弥氏、大村智氏に続くのは誰か
生理学・医学賞では、日本が強い免疫分野においては、日本発のがん治療薬であるオプジーポ開発の発端となったPD-1分子を発見した京都大学名誉教授の本庶佑氏が最有力とされています。このオプジーボを発売した小野製薬の株価は、9月26日時点で3日続伸となっています。
また、日本経済新聞の9月23日付けの記事によると、米国のラスカー賞とカナダのガードナー賞の両賞を獲得するとノーベル賞に選ばれる可能性が高いそうで、過去の受賞者では京都大学教授の山中伸弥氏がそれに当たります。同じ京都大学の森和俊教授は、細胞内の小胞体の機能メカニズムの解明で両賞を獲得しており、今回のノーベル賞の候補として挙げられています。
まとめ
以上、筆者の独断と偏見で自然科学分野の受賞予想をしてみました。中でも、リチウムイオン電池の世界的な技術的・経済産業的な貢献度からすると、そろそろ選ばれても良さそうなものだというのが、筆者の希望的観測です。
仮にノーベル賞を受賞しなかったとしても、リチウムイオン電池関連、特に素材関連企業については、以前の記事でも書いたように、今後の有力な投資テーマとして浮上する可能性がありそうです。
ノーベル賞では本命と言われる候補者が何年経っても選ばれないケースは少なくありませんが、日本人の受賞を期待しながら10月3日からの発表を待ちたいと思います。
LIMO編集部