「楽器演奏」は言語能力も高める

習い事の選択は本人、両親の希望をもとに決められることでしょうから、何がよいとはいえません。ただ、早い時期から「楽器演奏」を習わせることでのベネフィットについては様々な研究で効果が認められているようです。

南カリフォルニア大学のThe Brain and Creativity Instituteではロサアンゼルスフィルハーモニー協会の協力をえて、「音楽指導が子どもの社会的、感情的、認知的発達に与える影響」についての研究を2012年から5年間行いました(※2)

同じ社会経済的背景の6~7歳の子どもたちを以下の3グループに分けました。

1.バイオリン等の楽器演奏の指導を受けさせ、週に7時間程の練習をし、合奏にも参加
2.地元のサッカーチームに参加
3.何の活動にも参加しない

2年後、MRIなどで脳の発達を観察したところ、楽器演奏を習った子どもたちの脳の聴覚系は、他の子どもたちよりも早く成熟していることが分かりました。そして、この研究を主導したアサル・ハビビ博士によれば「聴覚系は言語の発達、読解力、コミュニケーションスキルに欠かせない全般的な音声処理にも影響を与える」といいます(※3)

つまり、楽器演奏を習った子どもの聴覚系の脳の成熟が早いということは、言語能力や読解力、コミュニケーションスキルの発達も加速させる可能性が高いと示唆しています。これについてはさらなる研究が必要なようです。

そういえば、国際的に活躍する演奏家の多くは比較的短期間で他言語を習得しているとよく耳にします。

「楽器演奏」スキルの学業への影響

また、カナダのブリティッシュコロンビア大学のニュースサイトによれば、同大学のピーター・ゴゾアシス教育学教授らが行った高校生を対象にした研究(※4)では「小学生のころから楽器を習い、高校生でも続けている学生は社会経済的背景、民族性に関係なく、英語、数学、科学に関して、楽器を習っていない同級生に比べて試験の成績では約1学年高い学力を見せた」(※5)ようです。

また共同研究者である同大学の人口と公衆衛生大学院のマーティン・グーン助教授は、「楽器を演奏するには、楽譜を読んだり、目、手、そして心を連動させたり、鋭い音感を身につけなければならない。それだけではなく、合奏するためには他人との協調性も必要とされるし、なにより、こういったことを上達させるために自己鍛錬する。このような経験の全ては認知能力や実行機能、また学業への意欲や自己効力感を高める」と語っています。