21年の半導体前工程装置市場は過去最高水準に

前年比3%超プラスの585億ドル規模、DRAM/ファンドリー牽引

サムスン電子の平澤工場

 2021年の半導体前工程装置(WFE=Wafer Fab Equipment)への投資金額は18年を上回り、過去最高の水準となる見通しだ。新型コロナや米中テック冷戦などマクロ環境が激変するなかで、半導体の重要性はより高まっており、現状で前年比3.5%増の585億ドル規模が見込まれている。アプリケーション別ではDRAM、ファンドリー投資が市場を牽引するかたちとなる一方、NANDフラッシュは投資案件が各社出てきているものの、市況が不透明なため、不確実性が伴う展開となっている。

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20年は前年比13%増で着地見込み

 20年の半導体前工程装置への投資金額は当初予測を上回り、前年比13%増の565億ドル規模となる見通し。ロジックその他分野はインテルの投資減額などから見通しが低下しているものの、台湾TSMCや中国SMICを筆頭にファンドリー投資が活発化。DRAM投資も最大手のサムスン電子が年央段階で投資先送りを行ったものの、足元で設備投資を再度前倒ししたことで、従来の横ばい見通しから1桁台半ばのプラス成長になる見込みだ。

 スマートフォン、データセンター(DC)など、足元の半導体の最終需要動向は決して万全ではないものの、前工程分野は先行投資の意味合いが強いことに加えて、単一キャパシティーあたりの投資金額が上昇していることも、前工程投資金額を押し上げている要因の1つとなっている。

 5/3nmなど先端ロジック分野では月産10万枚あたりの能力をグリーンフィールド投資で立ち上げる場合、200億ドル以上の投資金額が必要になっており、16/14nm世代に比べて投資が1.5倍近くになっている。同様にメモリー投資も1.3倍程度に投資金額が膨れ上がっている。

 こうした状況下、半導体製造装置メーカーに対しては、主要半導体メーカーから旺盛な需要が舞い込んでおり、主要企業の多くがフル稼働で装置生産に追われている状況だ。

 ファンドリー投資の多くを担うTSMCは、20年に引き続き高水準の投資を行うと見られており、5nm世代の追加投資、ならびに次世代の3nm世代の立ち上げ投資を重点的に行っていく。主要顧客であった中国ハイシリコン(海思半導体)の抜けた穴は小さくないものの、それをAMDやクアルコムが埋めていくシナリオとなる。

NAND投資は不確実性つきまとう

 メモリーはDRAM投資の方がより確度が増しており、サムスンを筆頭に微細化投資を進めるとみられる。スマホならびにDC分野で搭載容量が拡大、1Znm世代への要求が高まる見通しだ。DRAMはNANDに比べて参入企業も少なく、Capital Intensity(売上高に占める設備投資割合)も低いことから、収益が確保しやすく、設備投資を決断しやすい環境下にあるといえる。

 その一方で、NANDは参入企業数が多いことから供給過剰リスクが常につきまとっており、かつCapital Intensityも3割後半~4割前半で推移。DRAMに比べて収益確保が難しい状況にある。年明け以降も契約(コントラクト)価格は下落が続くと見られており、投資判断が難しい状況にある。

 主要各社とも年明け以降、投資案件が装置メーカーに対して提示されているものの、思い切った決断ができていないような状況も見て取れる。サムスン電子はP2(平澤第2工場)、X2(西安第2工場)で128層/176層の量産投資を控えているが、本格的な投資判断は先送りされているもよう。キオクシアも北上工場への次期投資のタイミングを探っている段階だ。

インテルの設備投資に不透明感

 主要アプリケーションのなかで、見通しが低下傾向にあるのがロジックその他分野だ。同分野の多くを担うインテルの設備投資が抑制されているためだ。同社は20年第2四半期決算のタイミングで7nm世代の開発が遅れていること、外部に生産をアウトソースする可能性を示唆しており、今後の設備投資方針に不透明感が出ている。加えて、現行の10nm世代についても需要低下や利益率の観点から、投資意欲が低下しており、装置メーカーに対する足元の発注も力強さに欠ける。

 NANDやロジック分野に不安要素はあるものの、全体的には旺盛な需要が続いている状況で、過去最高の市場規模となる可能性は非常に高い。パワー半導体をはじめとする200mm分野なども投資拡大が期待されており、製造装置・材料メーカーのさらなる業績拡大が期待されるところだ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳

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執筆者
稲葉 雅巳(電子デバイス産業新聞)

2005年(株)産業タイムズ社入社、以後、電子デバイス産業新聞(旧:半導体産業新聞)編集部記者として、半導体を中心にエレクトロニクス業界の取材活動を続ける。2015年から副編集長。