現在、2013年の「高年齢者雇用安定法」の改正を受けて、希望をすれば65歳まで働き続けることが可能となっています。60歳で退職する人もいれば、65歳まで働き続ける人もいるなか、やはり気になるのは退職後のお金のこと。それまでの貯蓄、退職金、そして年金が老後の生活を支える三本柱になるかと思います。

金融中央広報委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」から、まずは退職前の50代の貯蓄額についてみていきましょう。この調査によると、50代の貯蓄額の平均値は1,194万円、中央値は600万円であるということが分かります。

貯蓄額などでは、一部の富裕層によって平均値が上振れしてしまうことがよくあるため、中央値を使っておおよそ真ん中となる数値を出しているのですが、600万円という金額を聞いて「このままで老後は大丈夫なのだろうか」と少し不安になる方も多いのではないでしょうか。退職後のお金事情について考えていきましょう。

退職金はどのくらい貰えるのか?

東京都産業労働局が行った調査「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)」によると、定年時のモデル退職金(大学卒業後すぐに入社し、普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準)は「1,203.4万円」であることが分かっています。もちろん、勤続年数・収入額・勤めている会社によってその金額は大きく変動してくるものですが、約1,200万円もの退職金がもらえるとなると、先ほどの600万円と合算し、少し安心できるのではないかと思います。

しかしながら気をつけてほしいのは、勤めている会社にしっかりと退職金制度があるのかどうか、ということです。同調査によると、中小企業の約25%は退職金制度がないということも明らかになっています。退職金制度がしっかりあるのか否か、そしておよそどれくらいの額がもらえるのかなど、あらかじめ確認しておくことで今後必要となってくる貯蓄額も明らかになってきます。早め早めからそれらの情報をしっかりとおさえておくことが大切なのです。

年金はどのくらい貰えるのか?

さて、退職金とそれまでの貯蓄額でおよそ2,000万円弱となった老後資金ですが、果たして退職後、年金はいくらもらえるのでしょうか。

厚生労働省が2020年1月に発表した「令和2年度の年金額改定について」によると、夫が平均的な収入(平均標準報酬(賞与を含む月額換算)が43.9万円)で40年間就業し、妻が40年間専業主婦であった世帯が受け取り始める時点の年金の給付水準は「220,724円」であることが明らかになっています。この年金は、夫の厚生年金+夫と妻の国民年金という構成での金額であるため、夫の収入額や保険料の納付月数、また保険料を滞りなく支払い国民年金を満額需給できるか否かによっても大きく変動する数値ではありますが、おおよそのモデル給付額として示されています。

共働きで夫婦ともに厚生年金の受給資格がある場合は、さらに受給額も大幅にあがるため、老後の生活資金としてはゆとりのある金額となってきます。一方で自営業者と専業主婦の妻、というように国民年金にのみ加入している世帯をみてみましょう。先ほどの厚生労働省の発表によると令和二年度の国民年金の満額需給額は、1人あたり65,141円となるため、世帯で計算でも約13万円しか年金を受け取ることができません。

もちろん自営業者には退職という概念がないので、働き続けることで老後も資金を増やし続けることができますが、その世帯がどのような年金受給の体系になるかによって、必要な貯蓄額も大きく変わってくるといえるでしょう。

60代、貯蓄はどのくらい必要なのか?

公益財団法人生命保険文化センターが実施した「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人がゆとりある老後生活を送るためには月36.1万円必要だという結果が出ています。

上記のサラリーマンの夫と専業主婦の妻というモデルケースで計算すると、年金だけでは月々約14万円足りないことになってきます。65歳からおおよその平均寿命である85歳まで約20年間貯蓄からその足りない金額を出していくとなると、14万円×12か月×20年で、貯蓄は約3,360万円必要になってくることが分かります。

もちろん、“ゆとりある生活”に必要な費用が36.1万円であるため、毎月毎月そのような金額を使うわけではないとしても、やはり老後2,000万円必要になってくるというのは数字上でも現実味を帯びてきました。

ゆとりある老後のために

退職金や老後にもらえる年金に関してこれまでみてきましたが、それらはあくまでも現在の平均値やモデルケースであり、今後どのように変動するかは未知数です。特に年金は、これから少子高齢化が進んでいくと、受給額が減ってしまうというおそれも大いにあるでしょう。

どうなるのかわからない将来に備えて、早めから老後貯蓄を行っていくことはもちろんのこと、今は「自分で年金を作る」という国の制度も整っています。例えばiDeCoは、節税をしながら将来の年金を自分で作ることができる画期的な仕組みをとり、2020年9月現在では約170万人が加入している大きな制度となっています。iDeCoでは掛金が全額所得控除対象となるので、特に仕事をしており所得税や住民税を支払っている人にとってはそれだけでもやるメリットが大きいといえる制度です。

そのような自身にメリットのある制度にも目を向けながら、ゆとりある老後のために早い段階からしっかりと準備をしていくことが重要なのではないでしょうか。

【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯 金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)へ の預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに 株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点 の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社 内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。


【参照】
金融中央広報委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」各種分類別データ・4金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年版)
厚生労働省「令和2年度の年金額改定について
iDeCo公式サイト「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数等について