CMOSイメージセンサー(CIS)市場において、中華圏スマートフォンメーカーの動向に再び注目が集まっている。中国ファーウェイへの制裁強化により、オッポ(Oppo)やビーボ(Vivo)などの同業他社が積極的な事業計画を打ち出しているためだ。2021年からスマホメーカーの本格的なシェア変動が予想されており、この動きは当然のことながらCIS分野にも波及することになりそうだ。

OVX、足元で積極的な部品調達

 ファーウェイがスマホ市場から実質的に締め出されたことで、Oppo、Vivo、Xiaomi(シャオミー)の3社からなる「OVX」の勢いが増している。3社は21年の販売台数に関して、いずれも前年比で1.5~2倍をターゲットと位置づけており、足元でも積極的な部品調達を行っている。

 近年、スマホ市場はカメラの高機能化が一段と進んでおり、その牽引役がファーウェイであった。社内に優秀なカメラ技術者を抱え、積極的に先端技術を導入。カメラを複数個搭載して機能向上を図る多眼化に関しても、アップルよりもいち早く市場に対応機種を投入して、市場をリードする立場にあった。

ソニーは見通し引き下げ

 そのファーウェイがスマホ市場での存在感を急速に落とすなかで、影響を大きく受けているのがソニーだ。同社は第2四半期決算において、イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野の売上・利益について、8月時点の見通しを引き下げた。

 これまでイメージセンサーの売上高の2~3割を構成していたファーウェイ向けの収益は下期に見込んでおらず、9月末に在庫などの評価減175億円を計上した。

 最大顧客であるアップル向けは、iPhone新機種の売れ行きが好調で需要自体は堅調だが、21年度に向けては、ファーウェイ以外の顧客基盤を広げることが求められている。

サムスンはCIS投資拡大

 ターゲットとなるOVXにおいては、競合のサムスン電子、オムニビジョンテクノロジーズのシェアが高い。特にサムスン電子は近年、中華圏スマホからの需要拡大が成長ドライバーとなっていた。

 ただ、OVXはファーウェイに比べてカメラ技術の水準は一段落ちると目されており、CISの単価も相対的に低い。ソニーもこの点について、決算時にコメントしており、「21年度は汎用品を中心に顧客基盤とシェアの拡大に取り組み、22年度にカスタム品の増加で収益を回復させる」としている。

 サムスン電子もOVXからの需要拡大に伴い、21年以降のCIS事業の拡大が期待されている。18年に華城地区でDRAM生産を行っていた第11ラインをCIS向けに転換(S4ラインに名称変更)。20年以降は、同じくDRAMのレガシーラインであった第13ラインの転換投資に着手しており、足元のキャパシティーは月産7万枚程度まで高まったと見られている。

 今後も需要増を見据えて、積極的な能力増強を図っていくものと見られているが、積層ロジック部のキャパ不足が一部で指摘されている。

ギャラクシーコアは一部工程内製化

 一方のソニーは、設備投資計画は見直す。18~20年度で約6500億円を計画していたが、400億円程度減額する。20年度の設備投資額も2600億円から2350億円へ引き下げたが、20年度中にウエハー投入能力を300mm換算で13.8万枚まで高める計画については維持する。

 ただし、21年4月に稼働を開始する予定の長崎新工場は、稼働予定に変更はないものの、その後の設備増設ペースは見直すと説明しており、導入スケジュールを後ろ倒しする考え。

 ソニー、サムスン以外の供給メーカーも今後の需要拡大を見据え、積極的な投資計画を打ち出している。SKハイニックスはM10ラインを活用した300mmウエハーによる生産を強化していくほか、これまでファブレス企業であった中国ギャラクシーコアも上海エリアに自前で工場建設を開始。OCF(オンチップ・カラーフィルター)およびBSI(裏面照射型)工程に限り、自社生産を開始していく構え。

電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉 雅巳