筆者は様々なセミナーに登壇することもありますが、最近は長期的な資産形成やつみたて投資の話をしてほしいという依頼がほとんどです。
そうした講演の冒頭で、必ず出席者に尋ねることがあります。それは、「幼少時に数億円の遺産を相続した人はいらっしゃいますか?」「このなかで1億円以上の宝くじに当たった方はいらっしゃいますか?」の2つです。
毎回そうなのですが、挙手される方は全くいません。すなわち、初めから多額の資金を有して資産運用ができる人はほとんどいない、ということなのです。
資産形成のための”ガイドブック”
これは日本に限ったことではなく、米国でも同じです。最近は起業した会社が新規上場を果たしてビリオネアになる人もいるでしょうが、そんな事例は何百万人に1人いるかどうかの稀有な事例です。
ビジネスで成功することはあり得ますが、一夜にして多額の資産を築くというのはやはり不可能なのです。
それを見事に表しているのが、米国証券取引委員会(SEC)の“Saving and Investing”(貯蓄と投資)という32ページのガイドブックです。
SECといえば金融機関の規制当局というイメージが強いのですが、個人に向けてこうした資産形成のガイドブックを提供しているということは、米国政府自らが資産形成には時間がかかることを示していると言えるでしょう。
図表1は、そのガイドブックから重要な3点を抜粋したものです。