ソニー㈱は、2020年度のイメージング&センシング・ソリューション事業(I&SS=半導体事業)の通期業績見通しを下方修正した。米国政府の輸出規制で中国ファーウェイへのイメージセンサーの出荷を9月15日以降停止したことなどが影響し、売上高を1兆円から9600億円に、営業利益を1300億円から810億円にそれぞれ引き下げた。

在庫評価減175億円を計上

 通期見通しは、19年度実績に対して、売上高が10%減(19年度実績は1兆706億円)、営業利益が66%減(同2356億円)となる。ファーウェイ向けの収益は下期の見通しに含んでおらず、9月末の営業利益に在庫などの評価減175億円を計上した。この評価減について「汎用品よりカスタム品が多い」と説明。輸出ライセンスの付与で出荷再開の見通しがあるかについてはノーコメントとした。

 また、ファーウェイ以外の顧客向けは「北米は前年比増収、中国は追加受注の成果が出つつある」と述べた。

設備投資額をさらに引き下げ

 設備投資計画も見直す。当初は18~20年度にI&SS事業に対して7000億円を計画していたが、4~6月期に約6500億円へ引き下げ、さらに今回400億円程度減額して6100億円程度とする。20年度の設備投資額も2600億円から2350億円へ引き下げたが、20年度中にウエハー投入能力を300mm換算で13.8万枚まで高める計画については「設備導入は進める」と述べ、計画を維持する。

 一方、21年4月に稼働を開始する予定で整備を進めている長崎新工場は「稼働予定に変更はないが、その後の設備増設ペースは見直す」と説明し、導入スケジュールを後ろ倒しする考えを示した。

工場稼働率も一段の調整へ

 このほど発表した20年7~9月期のI&SS事業の業績は、売上高が前年同期比1%減の3017億円(うちイメージセンサーは同2%減の2686億円)、営業利益が同35%減の498億円だった。

 ウエハー投入能力は300mm換算で13万枚、稼働率は85%の11万枚で、デジカメ用・モバイル用ともに生産調整した。一部の工場で法定検査があったことも影響した。20年10~12月期もこの稼働率を維持するが、21年1~3月期はもう一段の生産調整を行い、稼働率を70%弱まで下げる予定。ただし「追加受注があれば、もう少し高くできる」と付け加えた。

収益回復は22年度に

 付加価値の高いカスタム品が多かったファーウェイ向けの出荷停止に伴い、イメージセンサーの収益回復には時間を要する見込みだ。21年度は汎用品を中心に顧客基盤とシェアの拡大に取り組み、22年度にカスタム品の増加で収益を回復させる考え。21年度は画素サイズ0.7μm品が主戦場になるとみてキャッチアップを進め、価格競争力も高めて顧客ベースを拡大。「20年度に失った数量ベースの市場シェアのかなりの部分を取り返すことが可能」と説明した。

 加えて、中長期的にエッジAIとセンシングを用いた事業領域の拡大や、車載センサーの本格的な立ち上げなどで成長を目指す方向性に変更はないことも強調したほか、研究開発費については「より幅広いスマートフォン顧客からのニーズに応え、かつ将来の技術面での競争優位性を維持・向上していくため、拙速な削減はすべきでない」と述べた。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏