効率的な旅館は支援し、ゾンビ旅館は淘汰する、といったことを考える論者もいるでしょうが、実際には見分けることは容易ではなく、手間と時間がかかるでしょう。その間に廃業してしまう旅館が出ては困りますから、緊急の措置として全部の旅館を支援すべきでしょう。
景気悪化で新興企業が倒れる
ゾンビ企業が淘汰されると、雇われていた労働者が失業するので消費をしなくなります。景気が悪化するわけです。そうなると、新陳代謝によって育つことが期待されている新興企業の需要も減少するので、肝心な新興企業が成長できなくなってしまうでしょう。そうなっては元も子もありません。
問題は、景気には、景気の悪化がさらなる悪化を招くメカニズムが内包されているということです。ゾンビ企業を淘汰すると、そのメカニズムが起動してしまうのです。
失業者が増えると労働者の所得が減って消費が減ります。企業の売り上げが減ると企業が設備投資をしなくなるので設備機械が売れなくなります。悪くすると銀行の貸し倒れが増えて銀行の決算が悪化し、自己資本比率規制等によって銀行が「貸し渋り」を始めるかもしれません。
ゾンビ企業を生かして雇用を守らせておくことで、そうしたリスクが少しでも防げるのだとしたら、ゾンビ企業は「労働力の移動を妨げている邪魔な存在」どころか、不況期に雇用を守り景気を守り、新興企業を守っている重要な存在なのです。ゾンビ企業も不況期には有難い存在なのです。