ダイヤモンド電池が注目

 一方、近年で特に注目を集めるのが主にβ崩壊を利用したタイプで、ダイヤモンド電池やベータボルタ電池と呼ばれる。先述のようにβ崩壊で電子を放出するが、これを半導体などを利用することで電気を集める仕組みだ。放射性物質としては、ニッケル63や炭素14といった放射性同位体が検討されている。炭素14は半減期が5730年であることから特に有望視されている。

宇宙探査機などに搭載

 原子力電池は1970年代から宇宙探査機、人工衛星、ペースメーカーなどで採用されてきた。宇宙探査機ではNASAのボイジャー、カッシーニ、ユリシーズ、ガリレオなどに搭載されている。その理由は、太陽光や水素といったエネルギーがなくても電気を得ることができるため。加えて、寿命が著しく長いことから惑星や衛星の長期探査に最適だ。先述の宇宙探査機はプルトニウム238を使用していることから今でも稼働中で、今後100年以上動くことになる。ペースメーカーでは超小型化したものを心臓に埋め込んでいる。

 ただし、原子力電池を搭載した人工衛星が事故を起こし、プルトニウム238が地上に落下したことから原子力電池の危険性が指摘されるようになった。これにより、太陽電池へのシフトが進んだ。ペースメーカーにしても、リスクが高いことからリチウム電池などに代替されている。

核廃棄物からC14を抽出

 一方、IoT化や自動車の電動化などが進むなか、原子力電池は再び脚光を浴びている。注目されている1社が英アーケンライト(Arkenlight、英ロンドン)だ。同社はブリストル大学のトム・スコット教授らの研究グループがダイヤモンド電池の実用化を目指して設立したスタートアップだ。

 同社は当初、ニッケル63を使ったダイヤモンド電池を開発し、その動作を実証した。その後、より効率の高いC14に取り組んできた。

 特徴的なのは、原子炉の減速材に使われる核廃棄物であるグラファイトブロックからC14を抽出する点。同社によると、グラファイトブロックの表面にはC14が集中しており、熱処理によりC14を気体化し、それを減圧・高温下でダイヤモンドに形成できるという。また、ダイヤモンドとなったC14の外側を、放射線を出さないダイヤモンドで包むことで、放射線を外に出さない工夫をしている。英国では累計9万5000tのグラファイトブロックが積み上がっており、これらを有効利用できるとしている。