本記事の3つのポイント

  •  ポストリチウムイオン電池の有力候補として原子力電池に注目。長寿命という特徴を生かした開発が進められている
  •  放射性物質が崩壊した時に得られる熱などを熱電変換素子などによって電気に変える
  •  英国や米国のスタートアップ企業は量産化に向けて開発を急ピッチで進めている
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 ポストリチウムイオン電池(LiB)の有力候補として全固体電池、リチウム硫黄電池、ナトリウムイオン電池などが挙がっているなか、密かに注目されているのが原子力電池だ。この技術自体は真新しいものではなく、1970年代から宇宙探査機、人工衛星、ペースメーカーなどに採用されてきた実績がある。

 最大のメリットが100年以上という長寿命で、2万年以上を目指している開発チームもある。また、充電が不要なことから充電設備もいらないほか、メンテナンスも不要。ただし、プルトニウムなどの放射性物質を採用することから破損した場合のリスクが高く、普及が進んで来なかったのが現状だ。一方、昨今では欧米スタートアップを中心に事業化に向けた取り組みが加速している。

 原子力電池は、放射線電池、アイソトープ電池、ラジオアイソトープ電池とも呼ばれる。原理は、放射性物質が崩壊した時に得られる熱などを熱電変換素子などによって電気に変えるもの。放射性物質はα崩壊、β崩壊、γ崩壊により、それぞれ熱、電子、電磁波などを放出するが、このうち熱を出すα崩壊を利用する。α崩壊は高いエネルギーを持つものの、物質への透過力が低いことから薄い構造体で遮蔽できる。

 加えて、放射性物質は放射性同位体である必要があり、また、長い半減期であることが望ましい。具体的には、これまでプルトニウム238、ポロニウム210、ストロンチウム90といった放射性同位体が使われてきた。うち、プルトニウム238は半減期が87.7年と長いことから宇宙探査機などで初期から採用されてきた。

 熱電変換素子は、熱をかけると電気を発生させるゼーベック効果を利用する。太陽電池と同様、N型半導体とP型半導体で構成されるダイオード構造が一般的だ。仕組みとしては、熱をかけられた側のN・P型半導体で電子やホールが発生し、これらが反対側に集まり、外部回路を通して合わさることで発電する。