トヨタ自動車の米国回復はいつか、恐るべし中国の急回復

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新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、様々な産業で大きな影響が出ている。そして、日本を代表する産業である製造業も例外ではない。

製造業は就業者数も多く、国内外の雇用に関しても大きな影響を与えるということはよく知られている。そしてその製造業代表するのは国内では自動車産業であるということは多くの方が認めることであろう。

しかしその自動車産業は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、販売だけではなく生産も影響を受けている産業の一つだ。

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日本の自動車メーカーは世界各国で販売だけではなく生産も行なっており、グローバルでの状況が把握できるという意味では、その開示情報は世界の各種トレンドを知るうえで有効だ。

そこで今回は、トヨタ自動車の公開情報をもとに、国内外の販売動向や生産動向について見ていくことにしよう。

2020年8月の販売及び生産状況はどうなっているのか

2020年9月29日にトヨタ自動車は同年8月の販売および生産の状況を公開している。

まずはじめに、グローバル販売からどのような状況になっているのかについて見ていこう。

グローバル販売については、レクサスを含むトヨタにおいて、2020年8月は約72万台で対前年比89.4%となっている。

グローバル販売における2020年のここまでの累計は対前年同期比80.3%ということで、2020年4月の対前年同月比53.7%をボトムに回復傾向にあるといって良いだろう。

また、国内販売については2020年8月は約10万台ということで対前年比89.4%と、グローバル販売の状況と大きく似ている。こちらも2020年5月の対前年同月比66.6%をボトムに回復傾向にあるといってよいだろう。

それでは生産についてはどうであろうか。

まず、レクサスを含むトヨタのグローバル生産について見ていこう。

2020年8月のグローバル生産台数は約63万台で対前年同月比は93.3%となっている。

過去を振り返ると2020年5月には対前年同月比45.6%にまで落ち込んだが、その後は回復の一途をたどっている。これは国内以上に海外生産の回復が大きく貢献してる格好だ。

では、多くの人が注目する国内精生産はどうであろうか。

2020年8月の国内生産については約20万台で、対前年同月比88.5%となっている。こちらも 2020年5月は約12万台まで落ち込んだ国内生産台数が回復傾向にあると言ってよいであろう。

しかし、国内生産の回復トレンドは海外生産のそれと比べるとやや緩やかというのが現状である。

海外生産だけについてみれば、2020年4月はその生産台数が116万台で対前年同月比33.8%まで落ち込んだものが、2020年8月には約43万台と対前年同月比95.7%にまで回復している。こうしてみると、海外生産については概ね昨年度の状況と同程度にまで回復してきたと言える。

販売と生産のアンバランスさ

ここまでトヨタ自動車における、足元の販売と生産の状況についてみてきたが、今後を考える上では何がポイントとなるのであろうか。

数字の上では生産は大きく回復途上にあるといえるが、販売がまだそれに追いついて来ていないというのが足元の数字を見る限りでは言える。

もちろん、今後の販売の回復を期待して生産の稼働をあげているというように見ることもできるが、実際に販売に結びつかなければ在庫となってしまうという可能性がある。

生産と販売のリードタイムがどの程度のものになるのか、今回の新型コロナウイルスの影響の正確な把握が求められる。

また、構造的な問題として、リモートワークの普及により移動そのもののあり方が見直されている中、新コロナウイルス感染拡大お前の販売状況に同じように戻るかということについては米国や日本では改めて考えておかなければならない点ということは多くの人が認識している点ではないだろうか。

こうした短期的な問題と現状、及び人々のライフスタイルの変化やそれに伴う産業構造の変化という点については、トヨタ自動車においても今後の生産体制や販売計画を考える部署においては鍵となるポイントといえよう。

国や地域で異なる回復の鮮明度

今回の情報を分析する上で非常に興味深い点については、グローバルの販売について見ていくと、新型コロナウイルスの影響もあり、国や地域で大きな差が出ているというのが特徴的だ。

それでは、トヨタにとって最も大きな市場である米国について見てみよう。

ハワイを含む米国については2020年8月の販売台数は119万台で対前年同月比77.3%となっている。現状では回復傾向にあるものの、前年度の水準に戻ったとは言い切れない状況である。

同じ北米でもカナダが対前年同月比96.5%にまで回復しているのを見ると、米国の回復はまだ半ばにあると言えるであろう。

北部における新型コロナ感染拡大の影響は現場も引きずっているというのがメインの味方でよかろう。

恐るべし中国の垂直回復

一方、大きく回復し、さらには前年度以上の水準にまでなっているのが中国である。

中国における販売台数は2020年8月においては約16万台と対前年同月比127.2%にまで達している。

2020年2月には販売台数が約2万3000台と対前年同月比29.8%にまで落ち込んだ中国であるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を克服し 、早くも2020年4月には販売台数としては14万台を超え、対前年同月比100%を戻すまでになっている。

今後占う業績の回復トレンド

ここまで見てきたように、米国の回復はまだ道半ばという状況ではあるが、中国はすでに8月までの累計で販売に関しては対前年比で100%以上の回復となっている。

米国では大統領選もあり、今後の選挙動向、またその後の景気刺激策などによって、自動車販売台数の推移も変わってくる可能性も十分ある。

このように、米国と中国での販売動向からは目が離せない。

泉田 良輔

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執筆者
泉田 良輔
  • 泉田 良輔
  • 証券アナリスト/経営者/元機関投資家

愛媛県松山市出身。2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(以下、ナビプラ)をシティグループ証券出身の証券アナリストであった原田慎司らとともに創業。ナビプラでは2013年に、個人投資家のための金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。その後、株初心者向けネットメディア「株1(カブワン)」、2015年には、くらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」の前身となる「投信1(トウシンワン)」を立ち上げる。それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャーとして従事。スペイン・ドミニコ会が設立した私立愛光中学校・愛光高等学校で6年間の寮生活を経て、慶応義塾大学商学部卒業。学部では深尾光洋ゼミにて国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)。大学院では農業用水を活用した小水力発電システムをテーマに再生可能エネルギーシステムデザインの研究を行う。著書に『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』『銀行はこれからどうなるのか』(いずれもクロスメディア・パブリッシング)『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)。また「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」「現代ビジネス」「東洋経済オンライン」「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?(週刊ダイヤモンド)」。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesThe EconomistBloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール慶應丸の内キャンパスなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。東京工業大学大学院非常勤講師として「エネルギー政策・経済特別講義」を2016年度から行う。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA) Blog:「泉田良輔の考え」 Twitter: @IzumX