ユニー・ファミリーマートホールディングス発足、セブン-イレブン・ジャパン追撃へ
2016年9月1日、ファミリーマートとユニグループ・ホールディングスが統合しユニー・ファミリーマートホールディングス(8028)が発足しました。統合後の店舗は約18,000店で、今後不採算の店舗を▲1,000店舗程度閉鎖すると言われます。これでセブン-イレブン・ジャパンの店舗数に肩を並べることができる規模になります。
冴えないローソンの株価
ユニー・ファミリーマートホールディングスにご祝儀ムードが広がる一方、ローソン(2651)の株価が冴えません。次のグラフは過去2年間の両社の株価の推移を示しましたものです。最近になった極めて対照的な動きをしていることがわかります。
青のラインがローソン、赤のラインがユニー・ファミリーマートホールディングス(旧ファミリーマート)の推移です。2016年の春先まで両社は同じような株価の動きをしていましたが、その後、大きく格差が広がっています。ローソン株、正念場に入っているようです。
ローソン株価下落の理由1:元気のないローソンの既存店売上高
ローソンの株価に元気がない理由のひとつは、国内ローソン事業およびナチュラルローソン事業の既存店売上の弱さにあります。3月から7月までの5カ月間で、前年同月を上回ったのが4月のみ、残りの4カ月は下回っています。ファミリーマート(統合前)は5月を除き前年同月を上回っています。これがこの2社の勢いの差を示していると見る投資家も多そうです。
ローソン株価下落の理由2:コンビニ業界3位が固定化の懸念
しかし問題は他にもありそうです。ローソングループは国内で約12,500店舗を展開しています。つまり、店舗数では上位2社の3分の2ほどになり、簡単に追いつけなくなりました。さらに上位3社の寡占化が進み、下位のコンビニチェーンをM&Aしても上位2社に簡単には追いつけなくなったと言えるでしょう。ローソンは最近ではスリーエフと資本業務提携をしていますが、上位追い上げには規模がまだ不足しています。
ローソン株価下落の理由3:多角化を模索してきたローソンだが・・・
ローソンはM&Aも活用しながら積極的にコンビニ周辺業態を開発してきました。ローソンストア100、ローソンマート、ナチュラルローソンなどがその例です。ドラッグストア併設店にも積極的ですし、最近では成城石井を買収しています。
またエンタメ関連の事業も強化してきました。HMVジャパンの買収、シネコン大手のユナイテッド・シネマの買収などです。
こうして事業ポートフォリオのリスク分散は進んだように見えますが、シナジーが発現されているのかと言われると、正直なところ分かりにくいと言えるでしょう。周辺業態開発でいえば、ローソンストア100は大量閉店をつい最近おこなったばかりですし、ローソンマートの多店舗展開も中止になりました。ナチュラルローソンの店舗数は137店舗であまり増えていません。
またエンタメ事業とのシナジーについてもなかなか数値面で感じることは難しいと言えます。
業界第3位の戦法は「マチ」でいいのか?
最近のローソンは既存店の什器の拡充などに力を入れ、品ぞろえの強化を進めようとしています。また店舗からの発注業務の効率化を進めています。基本的に新規出店よりも既存店の守りを固めていると言えそうです。
当面はこれらの守りの施策の成果を待つことになりそうですが、それだけでは十分ではないでしょう。
ちなみに筆者の周囲でよく耳にする声は「ローソンには積極的にはいかなくても、ナチュラルローソンはいい」という意見です。とくにスイーツ系がよいという意見が女性に多いです。また食材に凝りたいときに成城石井に行ってみる、という意見もよく聞きます。
筆者も試しにサンドイッチやスムージーを試してみましたが、お値段がやや張るものの、とてもおいしく、納得がいきます。通常のローソンにナチュラルローソンの商品がもっと並んでいてもいいのに、そう思わざるを得ません。
ナチュラルローソンの商品はセブンプレミアムと同等に差異化の図れる商品群ではないでしょうか。ローソンは単純な規模の競争から差異化の方向へより舵を切っていく時期が来たのかもしれません。成城石井の個性的な商品とあわせて、グループ全体の経営資源を従来にも増して商品開発に振り向けて欲しいと思います。いまこそ、これらのカードを切るときではないでしょうか。
筆頭株主、三菱商事の思惑は?
一方、コンビニ業界で規模の格差が看過できないとなれば、なんらかの方法で規模を補完する必要があるでしょう。その場合、筆頭株主の三菱商事の意向に注目が集まるでしょう。三菱商事が株式を保有している小売企業の中では、イオンやライフコーポレーションなどが気になる存在です。
LIMO編集部