銀行が地方経済を支えることは難しい
筆者はかつて銀行に勤務していましたので、地元顧客への対応がいかに重要か分かっているつもりです。勤務先だった某メガバンクの支店長は、町内会の寄り合いには必ず顔を出し、冠婚葬祭にもそつなく対応していました。当時新人だった筆者は、とてもここまではできない…と思ったものです。
待遇も悪くなく、1980年代後半の支店長には支店長車と運転手がついていました。銀行員のロールモデルが支店長だったわけです。ただし、銀行員は顧客との癒着を防ぐという理由から2〜3年程度で転勤します。これは支店長も例外ではありません。ずっとそこで活躍したいと思っても居られないのが実情です。
このように頻繁な人事異動があると、地域経済に貢献しようにも時間が足りません。担当者でも支店長でも、着任して取引先に顔を覚えてもらうのに半年かかり、新規貸出案件を増やそうにも相手あってのこと。そうこうするうちに2〜3年はすぐ経ってしまい、そしてまた転勤です。
これでは長期的な関係は築けませんし、いきおい目先の数字を追いかけることになります。もちろん、数字よりも人材育成や組織づくりに努める支店長さんもいることは事実ですが、ほとんどは営業目標を追いかけて後任に託すわけです。
本来は地方銀行であれメガバンクであれ、地元経済を振興し、融資を通じて企業を育てたり救ったりしたいと考えていると思います。しかしながら今は経済停滞期。地方企業を応援しなければ、という理由だけで貸せるはずはありません。地方にしか根を持たない地銀(及び地域金融機関)は、経済成長鈍化と人口減で活躍する場が減り続けているのです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)はさらなるハードル
さらに、日本の銀行にとっての大きなチャレンジはDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、これにはかなり時間がかかると思います。