菅政権の目玉政策の一つが地銀再編と言われています。しかし、これは地銀だけの問題ではなく、メガバンクも含めた日本の金融機関全体の問題だと筆者は考えます。にもかかわらず、なぜ地銀のみがフォーカスされて再編のターゲットになるのでしょうか。今回のコラムでは、日本の銀行全体が直面する問題について考えたいと思います。

人口減少下、銀行の数も減るのが当たり前

言うまでもなく日本では人口減少が進みます。現在の出生死亡率が変わらないとすれば、毎年約80万人減少していく計算です(下図参照、2065年の日本の人口は88百万人まで減少)。新潟市や浜松市くらいの政令指定都市が毎年なくなり、10年経てば大阪府クラスの地方自治体が消滅するイメージです。しかしながら人口増の決定打はありません。

参考:日本の将来推計人口

注:基本推計は出生中位・死亡中位仮定
出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」52ページ「分析結果まとめ」より抜粋

そうした中、地銀再編が必須と言われています。もともと地銀は地方振興のために設立された銀行(第一地銀)、もしくは無尽会社であった地域金融機関(第二地銀)で、営業地盤はその銀行がある限定された地域になります。もちろん越境ビジネスも可能ですが、歴史的に営業場所が固定されていますから、地元以外で営業するのは難しいのです。

加えて、地方都市ではメガバンクの支店、信用金庫、信用組合、ゆうちょ銀行が乱立しており、人口が減れば営業基盤が徐々に小さくなる宿命を負っていました。

その観点からは、地銀の再編(=減らす)はやむなしだと思いますし、人口減少下で銀行全体の数が減っていくのは致し方ありません。さはさりながら、今は地銀を再編のやり玉に挙げるのではなく、時代に合わなくなった既存の金融機関をどうすべきかが本当の問題なのです。