マイクロディスプレーメーカーの米Compound Photonics(CP)は、半導体用CMP(Chemical Mechanical Polishing=化学的機械研磨)、ウエハー薄化&研磨表面処理装置メーカーの米Axus Technology(米アリゾナ州)とモノリシック型マイクロLEDのプロセス開発で協業すると発表した。協業によって両社は、次世代AR(拡張現実)スマートグラス用に画素サイズ2μm、解像度1080pのマイクロLEDディスプレーを大量量産するためのウエハープロセスを開発する。

貼り合わせ前のウエハー平坦化技術を開発

 CP社はもともと、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)と呼ばれるシリコンウエハーを基材に用いた小型の液晶ディスプレーを製造しているが、近年は得意のシリコン技術を用いた小型マイクロLEDディスプレーの開発に注力しており、20年8月にはマイクロLEDディスプレーのプラットフォーム「IntelliPix」を発表し、21年初頭からデモサンプルの提供を開始する予定となっている。

 今回のAxus社との提携によって、CP社はマイクロLEDアレイをCMOSバックプレーン(背面駆動基板)にウエハーレベルでボンディングするため、Axus社のCMP装置「Capstone CMP」を用いてウエハーの平坦化&表面処理プロセスを確立する。

 開発を加速するため両社は、CP社がアリゾナ州チャンドラーに持つマイクロLEDイノベーションセンター「MiARA」で共同開発を行う。約1万5000平方フィートにクラス1000のクリーンルームを備えており、マイクロLEDアレイとCMOSバックプレーンを平坦化し、数百万ポイントの接点で接合できるようにし、ディスプレーモジュールの一貫大量生産を可能にする。

協業先のPlesseyとプロセス合わせ込み

 CP社とAxus社は2020年初頭からウエハーレベルのボンディング技術を共同開発してきたが、CP社とともにマイクロLEDディスプレーの量産化を進めているのが、19年10月に提携したマイクロLEDメーカーの英Plessey Semiconductorsだ。PlesseyのマイクロLEDアレイとCP社のCMOSバックプレーンを組み合わせ、ディスプレーモジュール化する取り組みを進めている。

 このPlesseyとAxus社は20年2月に開発契約を締結済みで、Plesseyは19年にAxus社のCMP装置やスクラバーを導入。さらにPlessey社は、製造装置メーカーのEVグループ(EVG)と共同開発契約を結び、EVGのウエハー接合装置「GEMINI」を導入して、Plessey社のマイクロLEDアレイとCP社のCMOSバックプレーンの貼り合わせに成功している。今回のCP社とAxus社の提携は、Plessey社を含めて製造装置や製造プロセス技術を共通化し、マイクロLEDの量産に備えるものと考えられる。

 Plesseyは19年5月、スマートグラス専業メーカーの米Vuzixと専用ディスプレーの長期供給契約を締結。さらに、20年3月にはAR/MR(複合現実)用マイクロLEDディスプレーおよびコンピューティングプラットフォームの開発で、SNS大手の米Facebookと協業すると発表し、Facebookが開発中のARスマートグラスにマイクロLEDディスプレーを独占供給するとみられている。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏