この記事の読みどころ

  •  青森市を訪問する機会がありましたが、疲弊した地方都市経済を見たような気がしました。
  •  再開発商業ビル「アウガ」が多額の債務超過に陥って事実上の破綻となったことは、地方自治体主導の経済活性化が限界に達していると言えます。
  •  人口減少が続く地方都市の経済活性化は待ったなしの政策課題です。

ねぶた祭りが終わった後の青森市内は閑散とした日常

本州の最北端に位置する青森県の県庁所在地、青森市に行く機会がありました。東京から新幹線に乗って約3時間半で新青森に到着、JR在来線に乗り換えて1駅で青森駅に着きます。改札口を出て100m歩くと海(青森湾)というロケーションです。

青函連絡船が航行していた最盛期(1960年代)には、ここから多くの人々が函館に渡っていました。今は人影も疎らで、静かな観光スポットになっているようです。

筆者が訪れたのは、青森ねぶた祭りが終わった2週間後であり、人通りも少なく“宴の後の静けさ”という感じがしました。ちなみに、青森ねぶた祭りは、東北三大祭りの1つであり、毎年延べ200万人近い観光客が訪れる夏祭りです。1980年に国の重要無形民俗文化財に指定されています。その祭りが終わった青森市は、いつもの日常に戻ったと言えるのでしょう。

かつては青函連絡船が行き来していた青森湾

青森県の人口減少率は全国第2位

既にご承知の通り、日本は人口の減少局面に入っています。特に地方における人口減少が大きく、その中でも、東北地方の人口減少が顕著です。実際、平成26年実績の人口減少率を見ると、1位:秋田県、2位:青森県、3位:高知県、4位:山形県、5位:和歌山県となっています(注:平成27年実績は未公表)。

青森駅前、及び、そこから続く商店街は、日曜日も平日も閑散としており、残念ながら活気を感じることはできませんでした。筆者はこうした地方都市に来るたびに、アベノミクスという経済政策がほとんど行き渡っていないことを実感します。筆者が見た限りでは、青森市も例外ではなさそうでした。

県庁所在地の青森市でこういう状況ですから、県内の他の都市も推して知るべしです。

青森の代表的な食材、マグロとホタテ

青森市が推進してきた再開発プロジェクトが事実上の破綻

ところで、ちょうど筆者が滞在していた時、青森市の厳しい経済状況を表す大きなニュースがありました。

それは、青森市が中心となって建設された再開発商業ビル「AUGA(アウガ)」を運営する第3セクター会社が多額の債務超過に陥り、社長を兼任していた副市長が引責辞任に追い込まれたというものです。報道によると、一定の目途を付けた後で市長も辞任する模様です。

ザックリ言うと、青森市の肝煎りで推進されてきた商業再開発プロジェクトが破綻したということです。第3セクター方式を採用していたとはいえ、事実上は青森市の運営と見られ、その運営資金は市民が収めた税金と考えられます。

破綻の要因は、「アウガ」の商業施設(テナントショップや飲食店)への集客減少ですが、他にも要因があるかもしれません。開業直後から入居テナントが減り続けているようで、9階建てのビルは6階以上が青森市の図書館というありさまです。青森駅前のランドマーク的な存在である斬新な商業ビルが、虚しく建っている印象を受けました。

中心市街地の活性化を目的に、2001年に開業した複合商業ビルのアウガ

地方自治体による経済活性化は既に限界

このニュースは、青森では大々的に報じられましたが、青森県民以外には何の関係もない些細な出来事でしょう。しかし、今回の件は地方自治体、とりわけ人口減少に伴う税収減が不可避となっている自治体、インバウンド需要を取り込めない自治体による経済活性化が、既に限界に達していることを物語っています。

なお、この「アウガ」の破綻に係る問題はさらに深刻化しており、26日にはもう一人の副市長も辞表を提出し、副市長不在という異例の事態になる模様です。

国務大臣である地方創成担当大臣の職務が見え難い

疲弊した地方都市経済の活性化には、民間からの大胆なアイデア採用、もしくは国の積極的な関与が必要不可欠と考えられます。

そこで気になるのが、現在の安倍内閣で任命されている「地方創成担当大臣」の職務成果です。地方創成担当大臣が任命されてから2年が経とうとしていますが、その職務内容も成果も、少なくとも、我々一般国民には全く知らされていない気がします。

地方創成担当大臣は、該当する省こそありませんが、立派な国務大臣です。成果が明確に表れない国務大臣は不要と言わざるを得ません。訪日外国人客の増加、東京五輪の成功、金融市場のグローバル化など様々な課題がありますが、地方経済の活性化への取り組みこそ、待ったなしの課題と言えましょう。

 

LIMO編集部