台湾LED大手のレクスターエレクトロニクス(Lextar Electronics、隆達電子)は、液晶ディスプレーに搭載するミニLEDバックライトの新シリーズとして「I-Mini Blue LED」を発表した。COB(Chip on Board)、DOB(Driver on Board)、ミニレンズアレイという3つの技術を採用し、テレビやモニター、車載ディスプレーなどに提供する。
バックライトを高度に制御
I-Mini Blue LEDシリーズは、COB技術で自社製のフリップチップミニLEDをライトボートに実装し、光学距離ゼロの超薄型パネル設計を実現。DOB技術でドライバーICとマイコンを統合し、マルチゾーン制御に対応する。
マルチチャネルのドライバーICは、バックライトの制御領域を5倍に増やして1000ゾーン以上に対応できるため、ICの数を半減することができ、100万対1以上の高コントラストを実現する。
さらに、ミニレンズアレイ技術で160度以上のビーム角と高い光抽出率を実現し、パネルの輝度を従来比3倍の1600ニットに高めることができる。
65インチテレビ用などをラインアップ
まず65インチのテレビ用ミニLEDバックライトを発売する。約2万のミニLEDチップを搭載し、1000以上のゾーン分割と、1600以上の高ダイナミックレンジを実現する。
また、12.3インチの車載ディスプレー用も市場投入する。1600ニット以上の高輝度で太陽光直下でも視認性を確保し、360ゾーン以上の調光でコントラストを高める。寿命5万時間以上を実現するため高耐久材料を採用する。
さらに、17.3インチのノートPC用、34インチのモニター用もラインアップする。独自の光学設計でミニLEDチップの数を20%以上削減し、ゲーム用やプロのクリエイター向けに提供していく。
普及加速へ事業体制も強化
レクスターは台湾液晶大手AUO(AU Optoronics、友達光電)のグループ会社で、2018年からミニLEDバックライトを提供している。ミニ/マイクロLEDの技術開発を加速・効率化するため、台湾LED大手のエピスター(Epistar、晶元光電)と共同持株会社「ENNOSTAR」を設立することを6月に発表しており、将来はアップルに供給する可能性があるのではないかと噂されている。
今回の新製品発売に際し、レクスターのビジネスグループ副社長のMitch Lee氏は「21~22年にミニLED市場の急成長が予測されており、当社はテレビや車載用に用途を拡大して、大量生産能力を実証する」と述べている。
21年に向けて搭載テレビが相次ぎ登場か
ミニLEDバックライトは、液晶が有機ELの画質に対抗するための有力な技術の1つに位置づけられている。自発光ディスプレーである有機ELに対し、自ら発光しないためバックライトが不可欠な液晶はコントラスト(明暗比)で劣るが、ミニLEDバックライトとローカルディミング(映像ソースに合わせたゾーン点灯制御)技術を組み合わせると、有機ELに対抗しうるコントラストを実現できるといわれている。
先ごろ、中国テレビ大手のTCLは、「6シリーズ」として240ブロック分割の4K QLEDテレビ(4K解像度で量子ドット材料を搭載した液晶テレビ)を発売した。55インチが700ドル、65インチが900ドル、75インチが1400ドルという低価格仕様で、「ミニLEDバックライトは高価」というイメージを一変させた。パッシブマトリクスのプリント配線板にミニLEDを搭載し、ブロック分割数を240と少なくして低価格を実現した。
TCLが低価格帯からミニLEDバックライトを採用したことで、今後は他の中国テレビメーカーもこれに追随する可能性が高い。21年以降は8Kテレビよりもむしろ、ミニLEDバックライトを搭載した4Kテレビの投入が増え、テレビメーカーの商品化ブームが起きそうな気配だ。
電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏