遺言が”争続”トラブルを引き起こすケースも・・・

このように、遺言を作成する際は、それぞれの様式に合ったものを用意する必要があります。また、「遺言を用意すれば一安心」とも言い切れません。なかには、遺言がきっかけで思わぬ事態に発展したケースもあるようです。実際に父親の遺言で予想外の展開を迎えた、Aさん(59歳・女性)の経験談をご紹介しましょう。

「生前、父は『あの引き出しに遺言をしまっている』と言っていました。そして父が他界し、指定された場所を探したのですが…結局どこを探しても見つかず・・・。さすがにこの時は、『これでは、他の兄弟と相続トラブルに陥ってしまう』と焦りを感じました。

案の定、遠方に住む弟からは“争族”を匂わすような不平不満が出ました。でも、兄・妹からは『嫁いだあとも、最期まで父の世話をしていたあなたが実家を相続して』と言ってもらえたため、大事にはなりませんでしたが…。

自筆証書遺言の場合は、紛失のリスクを踏まえ法務局で保管してもらう方がいいと感じました」

Aさんは兄弟同士の話し合いで事なきを得ましたが、遺言の紛失は相続トラブルの原因になりかねません。とくに自筆証書遺言は、紛失だけでなく形式上の不備により無効になるケースも存在します。遺言としての機能をきちんと果たすため、「遺言公正証書」の作成を視野に入れるのも1つの選択肢でしょう。