筆者は大手の個別指導塾で塾講師をしていた時期があります。その経験から「個別指導塾に入塾を検討した場合」、ぜひ知っておいていただきたい3つの点についてお話していきます。

ひと昔前は、塾での個別指導は、「授業料が割高」というイメージだった感があります。しかし、今どきはかなりリーズナブルな授業料の個別指導塾が増えてきている印象を受けます。「コスパがよさそう!」という理由で入塾を検討されるケースも多いでしょう。

実は、そこに落とし穴があります。

その⓵ 純然たる「個別指導」ではない場合が多い。

「個別指導」というと、まずは「1:1」の授業を想像する方が大半ではないか思います。でも、授業料が安さを謳っている個別指導塾で、「1:1」の授業はほとんどないでしょう。(※割増料金を出せば話は別ですが)

「1:1」ではない個別指導って?

文部科学省が発表している「平成30年(2018年)度子供の学習費調査」によると、1年間の中学生の補助学習費(自宅学習や学習塾・家庭教師などの費用)平均は公立中学校で22万円。私立中学校で24.5万円となっています。

筆者がウェブでみた、大手の個別指導塾の相場は、中学生であれば、大体月額1万2,000円~1万6,000円でした。これを年間金額にすると約14万円~19万円です。上述の「補助学習費」に含まれる額としては、妥当といったところでしょう。

上述の月額授業料を、週1回あたりの金額に換算すると、1コマ3,000円~4,000円前後となりますよね。それに対して塾講師のアルバイト料は、1コマあたり1,500~2,000円程度です。

塾側が払っているのは、講師のアルバイトだけではありません。事務員や教室長などの人件費、教室の家賃なども必要経費です。そこで、簡単に収益を増やす方法が、「1:2授業」や「1:3授業」なのです。

教える生徒が1人増えても、講師が受け取るアルバイト料は、500円程度増えるだけ、というケースが多いです。つまり、単純に考えると「1:3授業」を行うと、1コマあたりほぼ3倍弱の収益が期待できるわけです。

教える側の苦労

「1:2」授業ならまだしも、「1:3授業」になると、もはや個別指導とは言い難いものがあります。同時に別々の内容を教えなければならないのです。聖徳太子でも千手観音でもない講師の側にとっては、非常にハードな仕事であります。

同時並行でも、「同じ学年・同じ科目」ならば、なんとかできます。ところが筆者が教えていた塾では、3人とも学年や教科が違うこともしばしば。

「現代文の解説のために小説を読みながら、数学の図形問題を教える」なんてことが頻繁に発生してくるわけです。

生徒・保護者側のデメリット

こうした無理な教え方がどんな事態を生むかというと…

Aくんに国語の問題の解説をしている時に、Bさんが計算問題でつまずいてしまった…。そんなとき、Bさんは講師が対応するまで、頭を抱えたまま待っていなくてはならないのです。

親御さん方は「90分」のつもりで授業料を払っているはず。ところが、実際に講師の指導を受けている時間はかなり少ないのです。これじゃ話が違うじゃないか!と不信感を持たれる方がいても不思議ではありませんよね。