【正解の画像】左下に大きな星が入っている。ちなみに旗の縦と横の比率は1:2

「星の形」にもこだわりが

 左肩にイギリス国旗を配した「ブルー・エンサイン(イギリス青色船舶旗)」と呼ばれる青地の旗と星の組み合わせは、オセアニア地域の国旗によく見られるデザインです〈正解画像参照〉。その中でオーストラリア国旗を特徴づけているのは、何といってもイギリス国旗の下にある大きな七角星の存在です。

「コモンウェルス・スター(連邦の星)」と呼ばれるこの大きな七角星は、オーストラリア連邦の6つの州と特別地域(首都・準州など)を表しています。

 旗の右側には5つの星があります。これは英語で「サザンクロス」と呼ばれる南十字星を図案化したもので、「連邦の星」よりやや小さい4つの七角星と、さらに小さい1つの五角星で構成されています。

 ちなみに、1つだけ形がちがう星は「みなみじゅうじ座イプシロン星」という4等星で、5つの星の中では最も暗く見える星です。

以前の旗は星の形がすべて違っていた

 現在のオーストラリア国旗は、1901年にイギリス自治領のオーストラリア連邦が結成された際に公募された作品がもとになっています。

 当時は、左肩のイギリス国旗の下にある大きな星は七角星ではなく六角星。そして、南十字星の5つの星は、五角星、六角星、七角星、八角星、九角星と、星の形がすべて異なる複雑なデザインでした。

 1903年には南十字星の星が七角星と五角星の2種類に単純化され、1908年にはイギリス国旗の下の大きな星が六角星から七角星に替わる、という細かな変更を経て、現在のデザインになっています。

幻と消えたカンガルーの「新国旗」

 かつてイギリスの植民地だったイギリス連邦の国々には、左肩にイギリス国旗が入った旗を独立後も使い続ける国が少なくありません。オーストラリアの国旗の成り立ちとその未来を考えるとき、避けて通れないのが「イギリスとの関係」です。250年ほど前からこれまでの経過を簡単に振り返りましょう。

 1770年、イギリスの探検家ジェームズ・クックがオーストラリアに上陸して、イギリスの領土であると宣言。1828年にはオーストラリア大陸全体がイギリスの植民地となりました。

 その後、紆余曲折を経て、1942年にオーストラリアはイギリスから完全に独立を遂げます。ただ、ニュージーランドやカナダと同様、独立した主権国でありながら、現在も形式的にはイギリス国王を元首とする立憲君主制を取っています。

 この立憲君主制に対して異論の声が上がり、1999年、オーストラリアで共和制に移行することの是非を問う国民投票が行われました。そして、共和制移行後の新国旗として、オーストラリア先住民族を象徴するブーメランや、カンガルー、南十字星などを図案化した提案旗がつくられます。

 しかし、結局、55%の反対票で共和制への移行が否決されたため、新国旗の話も立ち消えになってしまいました。

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実は国民の4分の1は外国生まれ

 2015年から2016年にかけて、隣国ニュージーランドで新国旗のデザインが公募され、国旗変更に関する国民投票が行われました。これに刺激されて、オーストラリアでも国旗論争が再び盛り上がっています。

 オーストラリアの国旗を変えることを主張する人たちは、その理由として、「いまの国旗がニュージーランド国旗と似ていること」「イギリス植民地時代を思わせること」、そして「オーストラリアという国の多様性を考慮していないこと」などを挙げています。

 オーストラリアにイギリス人の入植が始まったのはいまから約250年前ですが、そのはるか昔からオーストラリア大陸や周辺の島々に住んでいたのが、独自の文化を持つ先住民族のアボリジニやトレス海峡諸島民です〈別画像参照〉。

アボリジニ(左)およびトレス海峡諸島民(右)の民族旗

 また、現在のオーストラリア人の8割は白人ですが、イギリス系やアイルランド系だけでなくイタリア系やドイツ系も多く、中国・インド・フィリピン・ベトナムなどのアジア系も増えています。

 実は国民の4分の1はオーストラリア以外の外国生まれ、という移民大国のオーストラリア。今後ますます加速する多様化の中で、国旗の未来が気になるところです。

 

■[監修者]苅安 望(かりやす・のぞみ)
日本旗章学協会会長。1949年、千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。総合商社に入社し東京本店、ニューヨーク支店、メルボルン支店食品部門勤務を経て、食品会社の取締役国際部長、顧問を歴任し2015年退職。2000年より旗章学協会国際連盟(FIAV)の公認団体である日本旗章学協会会長。北米旗章学協会、英国旗章学協会、オーストラリア旗章学協会、各会員。旗章学協会国際連盟にも投稿論文多数。著書は『世界の国旗と国章大図鑑 五訂版』『こども世界国旗図鑑』(平凡社)、『世界の国旗・国章歴史大図鑑』(山川出版社)など多数。

この記事の出典:
苅安望[監修]『国旗のまちがいさがし

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