何があっても子のために身をささげる無条件の母親の愛――。

日本のみならず、アジアのドラマにはそうした親子の愛をテーマとしたドラマは数多くあります。

胸やけしそうなこってりとした“愛”、厳しさの裏に隠された“愛”、大人になってから初めて気づく“愛”など、その描写方法は様々。“子どものため”という目的のもと、母親が少々行き過ぎた行動でひと悶着を起こしても、結局は丸くおさまるドラマは少なくありません。

意地悪な姑や義理のきょうだいなど、わかりやすい“ヒール”(悪役)がいて、最後に何らか報いを受ける“勧善懲悪”的なパターンもドラマの中ではよく見られるところです。

ところが、近年、この風潮に少しずつ異変が起きています。

日本で「毒になる親」が広く認知され始めた2010年代

まず日本。2010年代は、子に無力感を与え自立を阻む母親と、家庭内で存在感の薄い父親への違和感が広がった10年だったのではないでしょうか。

近年、強すぎる母の下で抑圧された子どもを描いた書籍は数多く出版されています。ドラマ市場においても『過保護のカホコ』『凪のお暇』『お母さん、娘をやめていいですか?』など、“子の自立を阻む母親”のテーマを含むドラマが次々と生み出されました。

“子どものため”をうたいながら、子どもの人生を巧みに操る母親像は、少しずつ社会に認知され始めています。