大家さんから「何とかしてくれ」と催促されるでしょうし、大変心苦しいのですが、家財処分すると遺産相続したとみなされるので、相続放棄したことを伝えて放置するしかないのです(賃貸物件の連帯保証人になっている場合は、片付けなければならない可能性があります)。

④相続放棄しても管理責任は放棄できない

相続放棄すると、被相続人の現金預金などの資産を相続できない代わりに、借入金の返済や納税義務などから解放されます。しかし、相続財産の管理義務は残るため、たとえばAさんのようなケースでは、相続財産管理人が決まるまでは遺産を適切に管理しなくてはなりません。

もし、この管理を怠ったことでトラブルが発生した場合には、損害賠償義務を負う可能性もあり注意が必要です。

おわりに

Aさんは住民税の納税義務も相続することを知らなかった、さらに早々にご兄弟の家財を処分し、貯金も使ってしまったために相続放棄ができなかったことで、あとから困ったことになってしまいました。

遺産相続は人生で何度も体験するものではありませんし、近しい身内が亡くなったときに遺産について考えるのは辛いものです。しかしながら、自分の生活を守るためにも適切に対処し、判断できないことがあったら迷わず専門家に相談するよう心に留めておきましょう。

【参考】
・「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」(国税庁)
・「民法の相続制度の概要」(国税庁)
・「納税義務者が死亡したとき、残りの市・県民税(個人住民税)はどうなりますか?」(諏訪市)
・「両親が滞納した税金ってどうなるの?」(一般社団法人 全日本任意売却支援協会)
・「相続放棄したら賃貸アパート解約と片づけはどうすればいい?」(相続弁護士相談Cafe)
・「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」(e-Gov)

吉田 貴絵