文部科学省が公表している「令和元年(2019年)度学校基本調査(確定値)」によれば、高等教育機関への進学率は82.8%(大学・短大進学率は58.1%、学(学部)進学率は53.7%)と、昨年に引き続き過去最高を記録しています。
一方、高等学校を卒業した後にかかる学費は、年々増加の傾向にあるともいわれています。進学を考えている人の中には、奨学金の利用を視野に入れている人もいるでしょう。今回は、ある家庭のエピソードから、奨学金について、少し考えてみることにしましょう。
娘さんを大学に進学させたMさんの話
数年前、Mさんは娘さんを大学に進学させました。Mさん世帯の年収は決して高くはなく、本来ならば娘さんの希望を叶えることは難しい状況でした。しかし学校の勧めもあり、貸与型の奨学金を利用することで、なんとか娘さんに4年間の学生生活を送らせることができました。
娘さんは大学卒業後に就職。会社に勤務するかたわら、奨学金の返済を続けていましたが、そのうち仕事を通じて知り合った男性と結婚をすることが決まりました。Mさんはその結婚を大いに喜び、娘さんの大学在学中からこれまでにコツコツと貯めたお金を「持参金なり、花嫁道具に使ってもらおう」と、お祝いとして渡すことにしました。
「お母さん、ありがとう」と、通帳を受け取った娘さん。しかし、娘さんは意外な言葉を口にします。
「あのね、彼の実家は持参金とか花嫁道具とか、そういうのはうるさくないみたいなの。新居も小さなアパートだし、家財道具もとりあえずは二人で持ち寄った独身時代から使っているもので充分。だから、もし、お母さんがこれを好きに使っていいというなら、奨学金の一括返済の一部に充てさせてほしい。この先何年も返し続けていくことを考えると、私は結婚生活において、それが一番不安。できるものなら、今ここで全部返してしまいたい」