私がフィリピンで金融事業を始めた理由

――なぜ須見さんは、フィリピンで金融事業を始められたのでしょうか?

なぜ日本人がフィリピンで金融事業を行っているのかと考える方もいらっしゃるかと思います。私がフィリピンで事業を始めた際の中心事業は「マイクロファイナンス」でした。マイクロファイナンスとは、開発途上国の貧困層に対して小口融資を提供すること。従来のフィリピンではこのマイクロファイナンスが、月利50%を超えるような状況でした。

マイクロファイナンスでお金を借りる人々の多くは、主にフィリピンの市場(いちば)で商売を営む人たちです。フィリピンの市場では、畳一畳分のスペースの中で、肉屋や八百屋や洋服屋など、さまざまなお店が営業しています。小さなお店が集まって、ひとつの市場を形成しているのです。

商売継続のためにお金を借りるわけですが、月利50%では当然、返せない人も現れます。そうなると、貧困層特有の問題が浮き彫りになってきます。

フィリピンには、日本の高度経済成長期のようなエネルギー自体はあるが、それを支えるだけの十分な原資が国内にない。自立して働く環境も整っているとは言いがたい。この問題に着目し、私は市場の5分の1以下という低金利でお金を貸す金融事業を開始しました。

――須見さんが行う事業の特徴を教えてください。

私が行っているマイクロファイナンスは、単なる「低金利での小口融資」ではありません。どういうビジネス展開をすればよいのかをアドバイスしたり、彼・彼女らの代わりに商品を仕入れて、それを彼・彼女らに卸したりなど、「融資先と一緒に商売をする」というビジネスパートナーとしての対等な関係を築いています。

二人三脚でビジネスを軌道に乗せることで、無理なく資金を回収できる仕組みを構築しています。

現在私の取り組みは多くの市場にも知れ渡っており、ありがたいことに「うちも面倒見てほしい」とお声を多くいただき、現在では、警察官や国家公務員の給料を前倒しで貸し付けるサービスも提供しています。