2020年4~6月期のFPD(Flat Panel Display)露光装置の販売台数は、ニコン、キヤノンの主要2社で4台にとどまった(前年同期は24台)。新型コロナウイルスの影響で、主要市場である中国でFPDメーカーへの出荷・搬入・据え付け・立ち上げ作業が上期に行えず、延期になっていることが要因。これにより、20年の通年販売台数は50台程度にとどまる公算が大きい。

19年の販売実績は2社合計で90台

 FPD露光装置は、液晶ディスプレーや有機ELディスプレーの画素を駆動する薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor=TFT)をガラス基板上に形成するのに使用される。TFTの回路パターンが書かれている原版であるフォトマスクに光を照射し、レンズを介してパターンをガラス基板上に露光する。

 ガラス基板の大きさには、製造するディスプレーのサイズによって違いがあり、大画面のディスプレーを量産するためガラス基板も大型化してきた。その大きさを「世代(Generation=G)」と呼んで区別しており、近年では、スマートフォン用の5インチや6インチを製造する場合は第6世代(6G=サイズは1500×1850mm)のガラス基板、テレビ用の65インチなどを製造する場合は8.5世代(8.5G=2200×2500mm)や10.5世代(10.5G=サイズは2940×3370mm)のガラス基板がそれぞれ使用される。FPD露光装置は、それぞれのガラス基板の世代に応じたサイズの装置が必要になる。

 過去5年の販売台数実績は、15年が80台、16年が129台、17年が149台、18年が142台、19年が90台だった。

ニコンは売り上げ計上できず

 ニコンは、20年4~6月期に売り上げを計上できなかった。2月以降中断している据付作業が6月中に再開できなかったためだ。据え付けは7月から一部再開したが、作業の制約によって今期中に据付完了できる装置の台数が限られ、未完了装置の売上計上は来期に繰り延べになる。

 これに伴い、20年度(21年3月期)の販売台数は18台(19年度は27台)に減少する見通しだ。世代別の内訳は、10.5Gが9台(19年度は18台)、7/8Gが2台(同5台)、5/6Gが7台(同4台)を想定している。なお、FPD市況に関しては、中小型パネル用の設備投資は回復基調、大型パネル用の設備投資は堅調と説明している。

キヤノンは4台にとどまる

 キヤノンも、20年4~6月期の販売台数が4台にとどまった(前年同期は15台)。FPDメーカーが集中する中国への渡航制限が続き、設置の先送りを余儀なくされた。顧客の投資意欲は継続しており、7月に入って顧客先での設置を再開したが、上期の遅れを年内で挽回することは難しく、年間販売台数は35台(19年は50台)となる見通しだ。

 一方、子会社のキヤノントッキが世界トップシェアを持つ有機EL蒸着装置の需要は19年よりも拡大する見込み。20年4~6月期は露光装置と同様に顧客先への渡航ができない状況だったが、工事進行基準を採用しているため、日本で生産を進めた分が売り上げに計上され増収になった。現在は顧客先で設置を再開しており、上期の遅れをすべて挽回することは難しいものの、年間でも増収を目指していく。

電子デバイス産業新聞 編集長 津村 明宏