アダム・スミスが神の見えざる手を重視したのは、「心の優しい王様が貧しい民のために法律を作ることもやめてください」という意味だったのですね。

雇用が増えないリスクはあるが・・・

通常は、最低賃金が下がると「安い時給でアルバイトを雇えば、メニューの値下げができるから客が増えるだろう」と考えた飲食店が大勢のアルバイトを雇うことになるはずです。

しかし、今次局面に於いては「メニューを値下げしても、どうせ客は増えないのだから、アルバイトの人数は増やさない」と考える飲食店が多いかもしれません。

そうなると、アルバイトの時給が下がっただけでアルバイトの人数が増えず、労働者全体としてのアルバイト収入がかえって減ってしまい、彼らの消費が減って景気がさらに悪くなってしまうかもしれません。

さすがに飲食店以外の会社が雇用を増やすと思いますので、そうした懸念は小さいとは思いますが、どれくらい雇用が増えるのかを見極めながら慎重に最低賃金を引き下げて行くことが必要かもしれませんね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義