矛盾だらけの信念

同様に、一部のクリスチャングループも科学を信じません。中には、ロックダウン中でも「神様が守ってくれる」と、マスクや距離も無視して礼拝を続けていた教会もありました。結局多くの感染者が出てニュースとなりました。

ペンシルベニア大学で宗教学/アフリカ学を教えるアンシア・バトラー教授は、NBC NEWSのオピニオン記事(※1)に「宗教活動は信心だけではなく、政治的な思想へも大きく影響している」、「長い間、 多くの(アメリカの)教会は神を敬うことの次に共和党主義でいることを教えている」、「マスクをしない信者は個人の自由を主張し、(共和党の)トランプ大統領に従っている」と述べています。

また、バトラー教授は「アメリカの信者は、しばしば聖書よりも個人の自由を重んじるようだ」と述べ、「もしクリスチャンが”自分を愛すように隣人を愛せよ”という聖書の教えを信じているのなら、マスク着用は難しい選択ではないはずだ」と科学だけではなく、聖書にさえも従っていないことを指摘しています。

他には、ジャーナリストのリズ・プランク氏がトランプ大統領の男性支持者にみるマスキュリニティ(男性性)とマスク着用拒否の関係を指摘しています(※2)

ホワイトハウス関係者によると、トランプ大統領は「マスクをする事を女々しく、脆弱の証」と思っているようです。

トランプ大統領を支持する白人男性の多くは、トランプ大統領は「Tough Guy(タフガイ)」だと憧れているといいます。トランプ大統領がマスクをしないことで、そのような男性支持者のマスク着用の機会を奪っているともいえるのです。

しかし、トランプ大統領がいう「強い男」とは、弱さを極端に恐れる時代遅れのステレオタイプ。一般的にステレオタイプの男らしさとは「(家族を危険から)守ること、(金、物、知恵を)提供すること」でしょう。マスク着用が感染予防になるといわれている今、マスクをしないことは「身近な人を危険から守る」という男らしさに反しているのでは、とプランク氏は矛盾を指摘しています。