2020年5月13日に行なわれた、ダイキン工業株式会社年2020月3期決算説明会の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:ダイキン工業株式会社 執行役員 コーポレートコミュニケーション担当 澤井克行 氏

Ⅰ.2020年3月期決算概要 ■全社実績

澤井克行氏:澤井です。私からは2020年3月期の決算概要、そして2021年3月期の業績見通しについてお話します。

2019年度業績は、第3四半期まで中国の景気減速や半導体市場の回復の遅れ、また新興国の通貨安など、マイナス影響を受ける中で、空調事業の各地域における販売拡大、またコストダウンの実行によって、計画に対して順調に進捗していました。

第4四半期の2月以降、新型コロナウイルスが、中国から欧州、アジアとグローバルに感染拡大し、経済活動が止まったことによる販売影響を大きく受けました。その中でも復興可能な地域への販売拡大、経費削減など、営業の極小化に取り組みましたが、年間の売上高は、前年比3パーセントの増収、営業利益は前年比4パーセントの減益となりました。

為替レートの実績は、ドル109円、ユーロ121円、人民元15.6円と、為替影響額は、売上高で前年比750億円マイナス、営業利益で前年比200億円のマイナスです。為替を除く実質ベースでは、売上高は、前年比6パーセントの増収、営業利益は前年比3パーセントの増益となりました。

経常利益は、前年比3パーセントの減益、当期純利益は、前年比10パーセントの減益となりました。当期純利益の減益幅が大きくなっていますが、これは新型コロナウイルスの影響による利益の減少に加えて、米国のフィルタ事業において、今回、事業計画をより慎重に見直し、無形固定資産を減損処理することとし、特別損失を計上したことによるものです。

これらの要因を除いた実質的なベースでは、前年比3.8パーセントのマイナスとなります。

■事業セグメント別実績

セグメント別の業績はこちらのとおりです。空調事業では第3四半期まで増収増益となっていましたが、2月以降の新型コロナウイルスの影響により増収減益となりました。為替を除く実質ベースでは、売上高は前年比7パーセントの増収、営業利益は前年比7パーセントの増益となりました。

化学事業は、半導体や自動車市場の減速の影響が大きく、減収減益となりました。

その他事業では、油機事業が日本・アジアの産機市場の悪化影響もあり、増収減益となりました。各事業、空調事業の地域別の状況については、のちほどご説明します。

■連結損益計算書

連結損益計算書の主要項目の増減について記載をしています。

■連結貸借対照表

連結貸借対照表の主要項目である、有利子負債の明細について記載しています。運転資金については、手元資金に加え、有利子負債比率も現状20.8パーセントであり、借り入れを増やせる余地もあると考えています。

事業環境の先行きが見通しにくい状況ではありますが、グループ全体の資金需要をきめ細かく把握して、攻めにも守りにも柔軟に対応できるよう資金調達を進めていきます。不測の事態に備える意味でも、借り入れとコミットメントラインを合わせまして、約6,700億円を確保しています。

■営業利益増減分析 –実績の対前年度比

2019年度の営業利益の対前年増益分析です。為替で200億円、関税影響で60億円、固定費等の増加で350億円のマイナス影響に対して拡販効果で73億円、売価で140億円、コストダウンで285億円、原材料市況で5億円のプラスとなりました。セグメント別での数値については、記載のとおりです。

Ⅱ.2021年3月期業績計画 ■全社業績計画

為替レートはドル108円、ユーロ120円、中国元15.7円を前提としており、業績見通しへの対前年の為替影響は、売上高でマイナス360億円、営業利益でマイナス125億円を見込んでいます。

為替影響を除く実質ベースでは、売上高は7パーセントの減収、営業利益は39パーセントの減益を計画しています。

■事業セグメント別業績計画

部門別の業績見通しです。空調事業は、売上高2長1,310億円、営業利益1,460億円で、化学事業は、売上高1,540億円、営業利益40億円、その他事業は、売上高450億円、営業利益0億円を計画しています。先ほど全社でご説明した為替営業額については、すべて空調部門での発生を見込んでいます。

■営業利益増減分析 –計画の対前年度比

2020年度の営業利益の対前年度増減分析です。為替で125億円、固定費等の増加で330億円、新型コロナウイルスの影響で1,830億円のマイナス影響に対して、拡販効果で690億円、売価で70億円、コストダウンで330億円、原材料市況で40億円のプラスとなっています。セグメント別の数値については記載のとおりです。

■地域別売上高の推移 –空調事業

2019年度の空調事業の地域別売上高は、日本、ヨーロッパ、アジア、アメリカで前年を上回りましたが、中国は新型コロナウイルスの感染拡大で2月以降大きく影響を受けたため、前年を下回りました。

為替影響を除く実質の売上高、前年比では、ヨーロッパ122パーセント、AHTの買収効果を除きますと110パーセントでした。中国は95パーセント、米州は111パーセント、アジア108パーセントとなりました。

2020年度の計画はご覧のとおりです。新型コロナウイルスの収束については、不透明の状況にあるため、各地域において現時点で見える状況を可能な限り反映し計画を立てています。具体的な需要の前提などについては後ほどご説明します。

2019年度における地域ごとの営業利益率のイメージをしますと、日本が8パーセント、ヨーロッパ10パーセント、中国25パーセント、米州6パーセント、アジア13パーセント、オセアニア・中近東4パーセントとなりました。

2020年度の見通しは、中国については前年並みの利益率を維持する計画ですが、その他の地域については数ポイント低下すると見ています。

■地域別売上高の推移 –化学事業

2019年度の化学事業の地域別売上高は、半導体自動車市場の減速の影響が大きく、いずれの地域も前年を下回りました。為替影響を除く実質の売上高前年比は、米州96パーセント、中国99パーセント、ヨーロッパは79パーセントとなりました。2020年度の計画についてはご覧のとおりです。

Ⅲ.事業/地域別概況 ■空調事業 –日本

空調事業の地域別の状況ついてご説明します。国内空調事業は、住宅用について消費税増税前駆け込みの反動や暖冬の影響もあって業界需要が前年を下回りましたが、当社はフラグシップ機の導入など、幅広い商品ラインナップで需要を捉え、シェアを拡大しました。

業務用は、設備投資に加え学校空調の特需もあり、前年を上回りました。当社は主力製品の販売を強化して収益性重視の戦略を徹底したことから、シェアはダウンしました。アプライドはR32機をはじめ高付加価値商品の販売を拡大しました。

2020年度は学校空調の特需が一巡することや、新型コロナウイルスの影響で需要減少を見込みますが、世の中の空気質への関心の高まりを受け、換気機能をはじめ、高付加価値商品の訴求を図ります。また需要の変化に対しまして柔軟な生産体制、販売店支援などの構えも取っていきます。

■空調事業 –米州

米州空調事業ですが、需要が堅調に推移する中、販売網の拡充、商品開発の強化、売価効果の買取に加えて、サービス事業の拡大を進めたことで売上高は前年を上回りました。

3月以降の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けましたが、2019年度実績への影響は限定的でした。グットマン社の売上では、現地通貨ベースで前年比111パーセントとなりました。住宅用ユニタリーが自前ルートの販売が堅調に推移したことに加えて、ルームエアコンのローコストモデルの販売が拡大しました。アプライドでは、機器の販売に加えましてサービス事業を拡大しました。

2020年度は新型コロナウイルスの影響で個人消費や設備投資が減少し需要が落ち込む見通しです。新商品購入や売価施策の実行に加えて、ウェブを活用したディーラー支援などを強化していきます。

またグットマン社の新工場への生産集約は昨年11月にすべて完了しており、生産性の向上とさらなるコストダウンで利益率の向上に取り組みます。

■空調事業 –中国

中国空調事業です。景気減速や政府の新築住宅抑制政策で厳しい需要環境が続く中にあって、市場の変化に対応した品揃えの強化、地方都市への販売拡大を進めたこと、また原材料市況軟化の取り込みや作品の内作・自動化などのコストダウンに努めたことで、第3四半期までは現地通貨ベースで、対前年で増収増益を維持していました。

新型コロナウイルス感染が拡大した第4四半期以降、2月は生産を停止、3月は都市封鎖、移動制限により市場がストップし、事業活動に大きな影響を受けました。

2020年度については、4月以降、徐々に市場は回復に向かうと思っています。市場の動向を見極めながら、事業拡大に向けて引き続き地方都市での販売店開発、IoT商品の拡販、保守・メンテナンス事業の拡大に注力します。また新型コロナウイルスの感染拡大を機に、オフライン、オンラインを組み合わせた販売、空気質ニーズに対応する商品の強化など、新たな事業モデルの構築にも取り組んでいきます。

■空調事業 –欧州・中近東・アフリカ

16ページをご覧ください。欧州空調事業です。猛暑効果に加えて、環境意識の高まりを捉え、高付加価値商品の販売を拡大しました。2月下旬以降、イタリアを中心に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けましたが、地域全体の売上高は前年を上回りました。

住宅用のR32機、業務用では省冷媒機種や再生冷媒仕様のVRVの販売が伸びています。暖房事業でも、フランスのインセンティブが追い風となり、ヒートポンプ式温水床暖房機器の販売を大きく伸ばしました。

2020年度は、都市封鎖や移動制限により経済活動が制約されるため、需要減少する見込みですが、当社は引き続き環境に配慮した商品の販売に注力していきます。 冷凍・冷蔵事業については、ザノッティ社とAHT社と一体となり、コールドチェーン全体での事業展開を加速していきます。

■空調事業 –アジア・オセアニア

アジア・オセアニアの空調事業です。各国において、大都市から地方都市まで販売網を拡充し、地域ニーズを捉えた差別化商品の展開、サービス体制の強化や営業人員を拡充したことで需要を取り込み、売上高は前年を大きく上回りました。

特にインドでは、顧客ニーズに応える商品のスピーディな製品化が成功しています。インド・タイ・ベトナム・インドネシアを中心に、各国で売上拡大をしました。アプライドはマレーシアの生産能力増強、販売店育成により販売を伸ばしました。

2020年度は、3月中旬から新型コロナウイルスの影響が拡大しており、マレーシア・インド・ベトナムの工場は操業を一時停止しました。各国によって状況は異なりますが、経済活動が制限され、当面の需要が大きく落ち込む見通しです。状況を見極めながら、商品の安定供給、販売強化策に取り組んでいきます。

■化学事業

化学事業は、半導体・自動車関連分野の需要減の影響、また欧州での冷媒ガスの販売減少により大幅な減収減益となりました。商品別には、フルオロカーボンガスは欧州の流通在庫滞留の影響が長引き、販売が減少しました。

樹脂・ゴムは、世界的な半導体需要の減少により、売上が落ち込みました。

化成品は、半胴体市場の影響でエッチング剤の販売は減少、撥水撥油剤は中国や米国の需要が伸びず、『オプツール』の販売も減少しました。

2020年度は、半導体市場の回復遅れに加えて、新型コロナウイルスの影響で自動車市場の落ち込みが大きくなることや、また個人消費、設備投資の冷え込みが想定され、フッ素化学の需要は大きく落ち込むと見ています。

一方、5Gの導入やIT化の加速を背景に、需要拡大が見込まれます半導体や情報通信分野でのシェアアップを図るほか、将来に向けた電気自動車向けの用途開発を推進していきます。

■フィルタ事業

フィルタ事業です。収益力の強化に向けて、生産体制の再編、営業体制の強化を進めてきましたが、各地域で売上は前年を下回りました。買収後、主力の米国工場における生産トラブルにより、供給遅れが発生したこと、P&I事業における市場環境の変化によって販売が減少したことが業績悪化の主な要因です。

2020年度は、米国の生産の早期立て直しとコストダウンの取り組み、営業体制の強化に手を打っていきます。また世界的に空気質への関心が高まっていることから、空気や空間に関わる社会課題の解決につながる高性能フィルタやクリーン機器向けの取り組みを強化していきます。

■その他事業

油機事業は、建機の販売は堅調に推移しましたが、産機事業の需要停滞もあり、売上高は前年を下回りました。特機事業は、防衛省向けの販売や在宅酸素機器の販売が堅調で、売上高は前年を上回りました。電子システム事業は、製造業の業務効率化を支援ショップやCG制作システムの販売拡大で売上は前年を上回りました。

2020年度は、油機事業については、設備投資の落ち込みから、日本や北米を中心に大幅な需要減少が見込まれ収益も悪化するとみています。特機、電子システムにおいては、引き続き堅調な市場において拡販を図ってきました。

Ⅳ.株主還元

2019年度の業績は計画を大幅に下回りましたが、株主のみなさまに対し、安定的かつ継続的に配当を実施していくという方針のもとに、期末配当金は現公表どおりの80円、年間160円を予定しています。また次期の配当期については、業績見通しは公表しましたが、新型コロナウイルスの影響が見通せない大変不透明な経営状況にあると考えていることから、未定とします。

配当方針には変わりなく、安定配当を重視して株主還元の一層の充実に努めていきます。

《補足データ》 ■為替前提

22ページ以降は補足データになります。為替の実績および2020年度の為替レートについては、こちらのとおりです。為替感応度は対ドル1円の変動で13億円、対ユーロ1円の変動で4億円となっています。タイバーツ、中国元、豪ドルはUSドルと連動して変動することを前提としています。

なおUSドル、タイバーツ、ユーロ、対トルコリラなど、フロー通貨の影響はこの感応度の影響額には含めていません。

■設備投資・減価償却費・研究開発費

2019年度の設備投資の実績は1,320億円、減価償却費は978億円、研究開発費は680億円となりました。設備投資は空調の東南アジア、科学事業を中心に、成長分野、成長地域における生産能力増強に加えて、各拠点の商品開発の強化、新機種投入のための生産設備やIoT関連投資などを実行していきました。

2020年度の計画については、設備投資は1,300億円、減価償却費は1,000億円、研究開発費700億円を計画しています。事業拡大に向けて、空調事業での能力増強投資や、化学での半導体・電池・自動車分野を中心とした大型投資を計画し積極的に実行していきますが、新型コロナウイルスの影響で先行きが不透明な中、金額などはより慎重に判断していきたいと思います。

■新型コロナウイルスの影響 ー生産・販売活動の現況

新型コロナウイルスの影響について、各事業、地域ごとの状況について生産活動、販売活動における影響をまとめていますのでご参照願います。私からの説明は以上です。ありがとうございました。

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