返済されなかった20万円

LINEや電話越しで言ってくれる「いつか俺と結婚してね」を聞くたび、揺れる心。この関係を終わらせるべきか、続けるべきか。そう悩んでいためぐみさんにある日届いたのが、良太さんからのSOS。

「彼は土木関係の仕事をしていたんですが、車の中に置いていた財布が盗まれてしまったと連絡が来て。給料を下ろしてきたばかりだったから、このままだと今月やっていけない。言いにくいけど、17万円貸してくれないかと言われました。」

嘘かもしれない。そんな思いは頭によぎりましたが、好きな人が困っているのを見捨てられなかっためぐみさんはお金を用意。「大変だろうと思い、20万円渡しました。さすがに大金だと思ったので、借用書を自作し、返済期限を記しました。彼には印鑑も押してもらって、万が一の時はこれを使うからちゃんと返してねと言った。」

本当に助かった。このお礼は絶対にするし、必ず返済する―。良太さんのその言葉を信じ、めぐみさんは1ヶ月後の返済期限を待つことに。しかし、期限直前になると良太さんは「後輩に前借りを頼まれて手元にお金がなくて返せない。来月でもいいかな」と言ってきたそう。めぐみさんはその言葉も信じましたが、翌月も良太さんが返済することはなく、「早く返せるようにするね」とだけ口にするように。その態度を見ていためぐみさんは、ようやく良太さんと別れる決心をしました。

それから、1年。離婚をし、新しい生活を始めためぐみさんのもとに、良太さんから連絡が。「久しぶり。元気にしているかな?よかったら今度、食事にでも行かない?外車を買ったから、迎えにいきたいな。」このLINEを見ためぐみさんの心には怒りが芽生えました。「結局、返済しないままだったのに外車を買う余裕はあったんだなって。」

「貸したお金、返済されてないけど。」そう良太さんに返信すると、「だよね!今月末には払うし、遅れたのは申し訳なかったから倍の金額を払うね」との返事が。しかし、結局、月末になってもお金は振り込まれず、連絡はそれ以降途絶えました。

それでも、借用書を武器にして争うという選択はめぐみさんの中にはないよう。「不倫中の出来事ということももちろんありますが、弁護士に頼んだり、彼にまた連絡を取ったりするのは時間がもったいないなって。高くつきましたが、私にも落ち度はありましたし、勉強代だと思っています。彼との出会いがなかったら夫に対する自分の本心から目を背けたままで、離婚に吹っ切れなかったので、そういった意味では感謝しています。」

20万円でめぐみさんが得たもの。それは、新しい人生を切り開くための勇気だったのかもしれません。

古川 諭香