年収1000万円。さぞかし貯蓄ができるだろうと思うけれど…?

では最後に、2020年5月に総務省統計局が公表した『家計調査報告(貯蓄・負債編)―2019年(令和元年)平均結果―(二人以上の世帯)』より、年収別の貯蓄現在高のうち、100万円未満である世帯について、見てみましょう。

年収別の貯蓄100万円未満世帯の割合(総務省の資料をもとに編集部作成)

全体を見れば、年収が高ければ高いほど貯蓄現在高は高い傾向にはあります。しかし、上記の表を見ると、年収が1000万円以上であるにもかかわらず、貯蓄がほとんどないという世帯も一定数存在していることがわかります。

月60万円もあれば、通常の生活レベルであれば、貯蓄がなくてもそうそう困ることはないでしょう。ただ、大きくお金が動くタイミングにおいては、貯蓄なしの家庭は要注意です。

たとえば、子どもの大学受験。多くの場合、入学が決まった段階で、数日中に初年度納付金を支払う必要があります。これは、大学によっては100万円近くの金額になることもあり、月60万円の収入があっても、貯蓄残高が100万円を切った状態だと、かなり苦しい状況になることは想像に難くありませんね。

やはり、どれだけ高い年収を得ていても「あるだけ使う」感覚は、とても危険ということなのでしょう。

まとめ

『年収1000万円』は、とてもステイタスな響きがありますが、手取りで考えると月60万円ときいて、「あれ?」と思った方もいらっしゃるかもしれませんね。またなかには、それだけ稼いでおきながら貯蓄100万円以下の世帯がいる事実に驚いた、という人もいらっしゃるでしょう。

たとえ年収が高くても、社会保険料や税金によって手取り額は大きく減ってしまいます。さらに「収入が上がったからいい家に住もう」「子どもにたくさんお金をかけよう」と出費がかさんでいけば、高年収とはいっても裕福な生活ができるとは限らないでしょう。

将来、今回のコロナ禍のような未曽有の事態が起きて、いきなり収入ゼロということが起こらないとも限りません。年収が高くても低くても、貯蓄に充てる金額はしっかりと確保しておきたいものです。

参考

『平成30年分民間給与実態統計調査』国税庁
『家計調査報告(貯蓄・負債編)―2019年(令和元年)平均結果―(二人以上の世帯)』総務省統計局
「みんなはいくら貯めている?20代~70代の貯蓄と負債の状況」LIMO

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

LIMO編集部