近年、中東ではイスラム過激組織イスラム国(IS)の支配領域は崩壊し、ISの脅威は弱体化した。もしくは、米中対立や北朝鮮、ロシアなど大国間覇権が大きな問題となり、世間の意識がそちらまで回らないのかも知れない。
当然ながら、日本の安全保障を考えるとそういった問題が重要なのは言うまでもないが、さまざまな安全保障問題を逐一世論に向かって発信することは研究者として重要だと考える。
イスラム過激派が跋扈するサハラ・サハラ以南地域
そのような中、近年ではアフリカ・サハラ地域のテロ情勢が急激に悪化し、懸念が高まっている。一部の情報では、サハラ諸国を構成するマリ、ニジェール、ブルキナファソの3カ国のテロによる犠牲者が、2016年に770人だったのに対し、2019年は4000人超と5倍以上に増加したという。
特に、内陸国ブルキナファソでは、長く国境を接するマリから越境してきたイスラム過激派によるテロ事件が増加し、1回の事件における犠牲者数が数十人に達するなど、残虐性と暴力性が高いテロ事件が続いている。
こういったテロを実行しているのは、ISやアルカイダを支持するイスラム過激派であり、ブルキナファソなど各国の政府は、広大な領域を自らの軍や警察だけで対応するのは不可能に近いと、各国からの支援を強く要請している。
しかし、思うような支援は行き届いておらず、イスラム過激派が自由に活動できる空間が生じている。ブルキナファソ当局は、防衛手段として、自分の身は自分で守るよう住民らに武器を提供する計画を進めていたという。
そして、その脅威はブルキナファソだけにと留まらず、さらに南下し、ガーナやトーゴ、ベナン、コートジボワールなどギニア湾沿岸諸国にまで浸透することが強く懸念されている。