ローソンの株価は第1四半期決算発表翌日▲5%下落
ローソン(2651)の株価が冴えません。
ローソンは7月11日の東京市場引け後に2017年2月期第1四半期(Q1)決算を発表しましたが、翌7月12日に株価は▲5%下落して引けました。TOPIXはこの日+2%上昇し、与党の参院選祝勝ラリー(上昇)を続けていますが、同社はこのサマーラリーに乗り遅れています。ちなみに、7月13日の同社株価も小動きです。この背景について考えてみたいと思います。
Q1は経常利益が対前年同期比▲13%減
株価下落の直接のきっかけは、経常利益が▲13%という2桁減益になったことだと思われます。この一因には熊本地震関連の費用もありますが、たとえば営業利益も同▲9%減少でしたので、減益基調にあることは否めません。
ちなみに、セブン&アイ・ホールディングス(3382)の営業利益は同▲1%減、ファミリーマート(8028)では同▲6%減となりました。こう見ると、率に違いはあるものの、コンビニ関連3社の業績は芳しくないと言えそうです。
経費効率が低下
読者の方の「セブン-イレブン・ジャパンはどうなんだ!?」というご指摘が聞こえてきそうですので、もう少し深掘りしましょう。
セブン&アイ・ホールディングスの中で国内コンビニ事業を担うセブン-イレブン・ジャパン(以下、SEJ)だけを見ると、少し状況が異なって見えます。SEJは既存店売上高が同+1.7%増、営業利益は微増となっています。
実は、3社共通して営業総利益は伸びていますが、それ以上に販売管理費が増えた結果、営業利益の伸びが悪くなっています。販売管理費の増加は各社各様ですが、業界共通の現象として経費効率が悪化しており、特にローソンでそれが目に付くのです。
大手コンビニ間のパワーバトル
販売管理費の増加の要因は基本的に既存店のサポート・強化費用だと想定されます。
この背景としては、消費マインドの低下によって消費者のコンビニ利用に対する姿勢が厳しくなったこと、過去数年にわたる業界全体の出店競争の結果、業界として店舗網に飽和感が出ていることなど、さまざまな要因が考えられそうです。
着々と自分のペースでエリアドミナント戦略を進めるSEJ、ユニーグループ・ホールディングスとの経営統合でコンビニ国内2強体制を構築しようとするファミリーマートに対して、ローソンは成城石井の買収、スリーエフとの提携などで対抗しようとしています。
しかしながら、SEJが国内18,768店、ファミリーマートが11,761店(エリアフランチャイズ含む)、ユニーグループ・ホールディングス傘下のサークルKサンクス6,253店舗に対して、ローソンは12,462店(グループ計)ですので、少なくとも規模の格差は定着してしまいそうです(いずれも2016年5月末)。
このため、ローソンは今、重点的に既存店の強化を進めています。具体的には什器の棚数を増やし商品を豊富にするという戦略です。このための費用が嵩んでいるとすれば、それは今後の大手コンビニ間のパワーバトルに備えるための先行投資と考えることも可能でしょう。
株式市場は、このような費用増が利益につながらない足元の状況にネガティブな反応をしたと言えそうです。
特別損失の減少はポジティブ
ローソンの足元の厳しい側面に注目してきましたが、ポジティブな点も決算から見受けられます。それは経常利益が減益にもかかわらず、税金等調整前四半期純利益と四半期純利益が、いずれも増加に転じていることです。
この主因は、特別損失である減損損失が大幅に減少しているためです。これは端的に言えば、既存店の質は1年前に比べて悪くなっていないということで、プラスに捉えるべき材料でしょう。
筆頭株主、三菱商事の総合力が試される
ご存じの方も多いと思いますが、ローソンの筆頭株主は三菱商事(8058)で、同社の関連会社でありマネジメントに三菱商事の人材が入っています。既存店中心に基盤固めをするローソンが次の展開を考える時、三菱商事との事業上の連携がさらに求められることでしょう。
ローソンはROEが高い優良な小売企業ですが、配当性向が70%を超えており、内部留保の増加が逆に少ないと言えます。高いROEを維持しながら、内部留保を通して成長投資を進めるという舵取りにシフトすべきかもしれません。
LIMO編集部