景気が回復して労働力不足になった時点で再建不能企業が倒産するならば、失業した労働者は労働力不足を緩和する存在として多くの企業に歓迎されることになるかもしれません。

ゾンビ企業延命の批判に答える

「不況にはゾンビ企業を一掃して新陳代謝を進めるというプラスの効果がある」、という人がいます。彼らは「ゾンビ企業が労働者を囲い込んでいるから、効率的な企業に労働力が回らず、日本経済が効率化していないのだ」と考えているようです。

したがって、ゾンビ企業が淘汰される絶好のチャンスである不況期が来たのに、政府がゾンビ企業を延命させてしまうのはケシカラン、と考えているようです。

実はこれは、小泉構造改革の主要な関心事項でした。構造改革を支持している人々は「景気よりゾンビ企業の淘汰」を優先すべきだと考え、反対派は景気対策による雇用確保が大事だと考えていたわけです。

筆者が考えるには、景気や失業というものに対する基本的な認識が両者間で根本的に異なっているので、論争しても議論が噛み合わないのだと思います。したがって本稿も、論争のためというよりは、どちらの意見を支持しようか迷っている人を意識して書いている次第です。