2016年6月、海外投資家は2か月連続で売り越した

2016年6月の東京株式市場は、米国の利上げ期待が後退し円高が進む中、日銀による追加金融緩和への期待が空振りに終わり、さらに英国のEU離脱問題からリスクオフ相場が色濃くなりました。TOPIXは月間で▲10%という大幅な下落を記録しています。

今回は、日本取引所グループのデータから、この間の現物株の売買動向を中心とした投資主体別の売買動向をレビューします。

まず、海外投資家は▲2,630億円の売り越しでした。年初から見ると、4月を除き5か月目の売り越しになります。一見規模が大きいようですが、実は1月から3月にかけては▲1兆円、▲2兆円、▲2兆円という売り越し金額でした。

したがって、最近の売り越しのペースは鈍化したと言えそうです。週次で見ると、英EU離脱問題直後は2週連続で売り越しでしたが、2016年6月27日-7月1日の週はわずかですが買い越しに転じています。

事業法人、信託銀行、個人の逆張りは健在

海外投資家の売りに買い向かう投資主体は事業法人、信託銀行、個人でした。株価が下げる時に買い向かう逆張りスタンスは、従来と変わりありません。6月の買い越し額はそれぞれ+5,835億円、+5,747億円、+2,814億円でした。

事業法人は手許現金も潤沢で、ROE経営を進めるために自社株買いに積極的であることが伺えます。

裁定買い残は低水準に

ちなみに、6月は証券会社の自己部門が▲10,961億円という大幅な売り越しになっていますが、これは現物買い-先物売りを中心とする裁定取引の解消(現物売り-先物買いによる残高圧縮)と関連がありそうです。

6月にこの残高は▲11,676億円減少し、2016年7月1日時点で7,504億円の残高です。この水準は2011年後半やリーマンショック時に匹敵する低水準であり、裁定解消売りに怯える心配はひとまず後退したと言えそうです。

海外投資家のアベノミクス信任が問われる局面に

今後の株価の動向を占うカギは、引き続き海外投資家の動向にあるでしょう。事業法人の自社株買いや信託銀行・個人の買いは、株価が下げた時に買い向かう逆張りスタンスが基本だからです。

海外投資家はアベノミクスの最初の1年間に急速な買い越しを続け、その後は巡航速度で買い増してきました。しかし、現状では巡航速度の買い増し分はほぼ売却されたと推測されます。

参院選も終わり、くすぶる業績懸念をカバーするような景気対策、規制緩和などでさらに一歩踏み込んだ政策を展開できるのか、海外投資家の視線はいっそう厳しくなると思います。

もし、彼らの失望を招くようであれば、株価にはさらに下押し圧力が加わります。GPIFなどの公的資金の動向にも注目が集まりそうです。

 

LIMO編集部