同様に、製造業がサービス業より先に回復基調に戻ることが予想される。また、消費と投資を比べると、経済の先行き不透明感や家計収入の減少に直面しても生活必需品などの消費を減らすことは難しいため、消費の水準が投資ほど大きく落ち込むことはないと思われる。

直近数週間の経済活動の冷え込みと新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウンの延長を考慮して、エコノミストは相次いでインドの国内総生産(GDP)成長率見通しを大幅に下方修正している。

感染拡大防止策の一部が6月末まで維持される可能性がある中で、4-6月期の経済成長率の大幅な低下に加えて、その後遺症が7-9月期も続くことが予想される。供給サイドに比べると、需要ショックからの反転には時間がかかるため、成長がプラスに転じるのは2020年末近くまで待たねばならないことも考えられる。

政府は5月12日、総額20兆ルピー(約29兆円)の経済対策を発表した。財政・金融措置を含む景気刺激策パッケージの規模はインドの名目GDPの約10%に相当する。同パッケージの一部は市場からの借り入れでまかなわれる予定で、政府が2020年度(2020年4月-2021年3月)の借り入れ目標を当初の7.8兆ルピーから12兆ルピーに引き上げた。

投資家は当初、経済対策に前向きな反応を見せたが、その後、パッケージの3分の1以上は2020年に入ってからこれまでに公表された金融措置だとわかると、歓迎ムードは消えてしまった(図表1参照)。

経済対策には、マイクロ企業家、中小企業、それらに融資を行うノンバンク金融事業会社(NBCF)を対象に設定された総額620億ドル相当の信用与信枠、電力の配電(小売)業者向けの100億ドル相当の融資枠がそれぞれ含まれている。政府は、インド経済の根幹をなす中小企業、「シャドーバンク(影の銀行)」、不動産会社など、新型コロナウイルスで打撃を被った部門への支援に力を入れる姿勢を鮮明にしている。

経済対策発表の2週間前に格付会社フィッチ・レーティングスは、インドの財政が一段と悪化した場合、格付けを引き下げる可能性があると警告していた。インドでは、景気はパンデミック(世界的大流行)発生前から減速しており、財政も低税徴収率による歳入不足が続く中で歳出が増えたことから悪化し続けていた。

最新の経済対策は供給サイドを支援する措置で構成されているが、ロックダウン解除後には政府が需要サイドの支援策を発表するという期待が国内では見られる。