レビュー:米S&P500が最高値に迫る一方、日本株と欧州株が軟調に終わった一週間
先週(7月4日-7月8日)の主要国の株式市場は上昇した市場と下落した市場がはっきりと分かれる展開でした。
上昇したのはベトナム、上海、ブラジル、米国などでした。とくに米国市場は週末発表の6月の雇用統計が、雇用と賃金の緩やかな上昇を示す内容となり、経済の拡大期待と利上げ先延ばしという株式市場には適温な内容になりました。この結果S&P500指数は、最高値を伺う水準まで上昇しています(NYダウ工業株も同様です)。
一方、下落が目立ったのは日本や欧州市場でした。英EU離脱から英国の不動産市場の低迷が嫌気されると同時に、欧州大陸の銀行株の下落が続いており、欧州をめぐるリスクオフ相場はまだ出口が見えない印象です。そのためユーロは対ドルで緩やかに下落し、円は対ドル・対ユーロで上昇しています。日銀が物価目標を引き下げたものの、追加緩和策への期待がそれほど高まっていないため、円買いに安心感が出ていると思われます。日本株は円高に呼応して下げましたが、欧州市場の動向を反映し不動産と銀行の下げがきつくなりました。
なお週末の米株高に呼応しCME日経平均先物は上昇していますが、それでも週間でみれば約▲2%程度下落しています。
アウトルック:最高値更新をめざす米株に他の株式市場が追随できるか
今週(7月11-7月15日)は、米国株が最高値をしっかり更新するか、そしてそれがグローバルな株式市場全体の底上げにつながるのかがポイントになります。
先週はたしかに一部の株式市場に明るさが戻りましたが、主要国では長期金利の大幅な低下が続いています。原油価格の騰勢が一服し、貴金属価格がじり高を続けるなど、筆者には「半身のリスクオン」と映りました。
市場のムードがさらに改善できるかは、マクロ経済や企業業績への期待が高まるかにかかってきています。米国ではアルコア、JPモルガン・チェース、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなどの決算が発表されます。米国のベージュブック、中国の貿易収支と主要マクロ統計も注目でしょう。
日本では選挙後の経済対策や株式市場対策、ファーストリテイリング(9983)の決算、LINE(3938)のIPOがカギになりそうです。このところ2-5月期の小売企業の決算が出ていますが、芳しくない内容の銘柄には容赦ない売りが出ています。7月後半からはじまる4-6月期決算に対しても警戒感は強いと思われますので、この状況から抜け出すには海外市場の好転と経済政策によるサポートが必要でしょう。
なお、欧州の銀行についても引き続き注意が必要です。
LIMO編集部