「恐怖指数」とも呼ばれる、投資家の不安心理の強弱を表す指数
英国で2016年6月23日、欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票が行われました。当初は残留派が優位とも伝えられていましたが、ふたを開けてみれば国民の51.9%が離脱を支持するという結果になりました。
24日(金)、27日(月)の株式相場や為替相場は世界的に大荒れとなりました。
その過程で、ニュースなどでは「VIX指数」に言及する記事をいくつか見かけました。VIX指数は「ボラティリティ・インデックス(Volatility Index)」の略で、日本語では「恐怖指数」とも呼ばれます。
米国のCBOE(シカゴ・オプション取引所)が、「S&P500(米国のスタンダード&プアーズ社が算出している株価指数)」を対象とするオプション取引の値動きを元に算出している指数です。
VIX指数はその名のとおり、ボラティリティ(価格変動)が大きいと数値が高くなります。このため株価が高値圏にあっても、じりじりと値が上がっていたり高値保ち合いになっていたりするいわば「平時」には、VIX指数の数値は上がりません。
価格が急に上下するといった「有事」に数値が跳ね上がります。投資家の不安心理の強弱を表す、まさに「恐怖指数」なのです。
さまざまなできごとで指数が大幅上昇。リーマンショック時に指数は過去最高に
VIX指数は、いわゆる平時には10~20ぐらいの間で推移します。30を超えれば市場は大荒れで、投資家が大きく不安を感じていることを示すと言われます。
今回のEU離脱では、VIX指数はどこまで上がったのでしょうか。離脱が決まった25日のVIX指数は25.76でした。それほど高くないと感じる人がいるかもしれません。過去にはもっと大きく上昇したこともあります。
リーマンショック時のVIX指数の最高値は89.53にも達しています。いかに投資家が不安を感じていたかがわかります。それと比べると、今回の25.76という数値は急上昇したとは言え、若干の変化にとどまりました。
投票結果が意外であったことから、混乱はあったものの投げ売りになるほどではなかったということでしょう。7月に入ると、指数も15~17台に落ち着いています。
VIX指数に連動するETF、ETNなどの金融商品もある
一般に、VIX指数は投資家心理が悪化する時に上昇します。このためS&P500の値動きとはほぼ逆相関の関係にあります。この性質を利用することで、株式投資のリスクヘッジとしてVIX投資を活用することができます。
欧米にはVIXに連動する投資商品が数多くありますが、国内でもETF(上場投資信託)やETN(上場投資証券/指標連動証券)の形で、VIX指数に投資することができます。
ETF、ETNはどちらも証券取引所に上場している金融商品であり、値動きや損益が把握しやすく、また少額から投資を始めることができます。
ただし、ここで注意しなければならないのは、VIX指数はボラティリティが大きくならないと上昇しないことです。つまり、相場の動きが静かな時はVIX指数関連商品の価格は上がりません。
逆に先物指数の変動率に連動する商品の場合、中長期的に保有すると価値が減価してしまいます。その点で、これらのVIX指数関連商品は、株価下落時など、タイミングを見極めた上での短期投資に適していると言えます。
下原 一晃