「ある日、いつものように『コーヒーお願いね』って頼んで仕事部屋へ行こうとしたら、これまで見たこともないような顔で『いい加減にして!前々から思ってたけど、私は家政婦じゃない。それに私にも仕事があるから、いちいち中断させられるとイライラする』と言われました。」
自粛前、2人が顔を合わせていたのは、会社から帰宅した後の数時間。その短い時間なら頑張れた家事や雑務が毎日・24時間いつでも発生するようになったことでよし子さんの心は限界を迎えてしまったのです。
「恥ずかしい話ですが、妻に言われるまで僕は全く与えていた負担に気づいていませんでした。よく考えれば、僕は目薬の置いてある場所すら知らない。知ろうともしませんでした。それは妻に頼めばいいやっていうだらしない考えがあったからです。そんな自分が情けなくなりました。」
よし子さんの心境を知った晃さんはその日以来、仕事が終わった後にお互いの仕事量やスケジュールを把握する時間を定期的に設け、ホワイトボードに日ごとの家事分担を記すようになったそう。「僕は妻の気持ちを察することができなかったので、言ってもらえてよかった。もし自粛がなかったら、この先も妻に負担を与え続けていたのかもしれないと思うと、本当に申し訳なくなります。」
おわりに
結婚歴が長くなるにつれ、「やってもらって当たり前」だと思うことは増えていくもの。しかし、一緒に長時間過ごさなければならなくなった今、私たちはそんな「当たり前」など存在しないことに気づかなければいけないのかもしれません。
相手の気持ちをおざなりにせず、自分の気持ちも共有する。パートナーと過ごす時間が長くなっている今、そんなコミュニケーション法を意識していけたら家族仲は少し変わってくるかもしれません。これを機に、大切な人の健康だけでなく、心も守れるような対策法を考えていけたらいいですね。
古川 諭香